ニホンミツバチの外敵と病気|群が消える原因

本ページのリンクには広告が含まれる場合があります。
目次

ハチミツを残したまま、群がいなくなった

「昨日まで元気に出入りしていたのに、翌日には巣箱が空っぽになっていた」「ハチミツをたっぷり残したまま、蜂だけが消えてしまった」——ニホンミツバチを飼っていると、こうした経験は決して珍しくありません。

私も調子良かった群れが何キロものハチミツを残して冬に消滅してしまったことがあります。

群が消える主な原因は以下のような3種類に分類できるかと思います。

  • 外敵(スズメバチ、スムシ、盗蜜、哺乳類など)
  • 病気・寄生虫(アカリンダニ、ウイルス病、腐蛆病など)
  • 環境・管理(農薬、餓死、女王喪失、何らかの原因による逃去など)

この記事でわかること

この記事ではニホンミツバチの群れが消滅してしまう原因になる主な外敵や病気の概要を説明します。

  • ニホンミツバチの外敵と病気の全体像がつかめます。
  • 季節別で、いつ・何を警戒すればよいかが分かるようになります。
  • スズメバチ・スムシ・盗蜜・害獣への対策の基本を把握できます。
  • アカリンダニ、サックブルード病、腐蛆病の基礎知識が得られます。
  • 農薬・餓死などのその他の消滅要因についても触れています。

群れの異変について調べたい方は、気になる項目からご覧ください。

同じような症状でも原因が異なることがあります。原因を考える際の参考として、各項目の説明をご確認ください。

参考になる書籍

(PR) 本記事の執筆については、京都産業大学の高橋先生の書籍「ミツバチの秘密」を参考にさせて頂きました。病害虫や天敵については第6章に詳しく記載されています。長年ミツバチを研究されてこられた高橋先生の著作であり、ニホンミツバチを飼育する際にも知っておくべきことやヒントになることがたくさん記載されています。

ご興味のある方はご購入されてみてはいかがでしょうか?書籍版はこちら。電子版はこちらです。

前提|ニホンミツバチの生存戦略と人が群れのためにできること

まず押さえておきたいのが、ニホンミツバチは「逃去」(巣を丸ごと捨てて引っ越すこと)という防衛戦略を持っている点です。環境が悪化して群れの存続が危うくなると、別の場所に引っ越して巣を作り直します。

逃げた方が生存率が高いために受け継がれてきた戦略で、元気な群れが逃亡することは稀と言われています。

ニホンミツバチは逃げやすいと言われる一方で、オオスズメバチに対して「熱殺蜂球(集団で取り囲み、筋肉の発熱で蒸し殺す技)」で戦うこともできます。

日本列島で長く生き延びる過程で、逃げる+戦うという生存戦略を編み出したんだと思います。

ニホンミツバチの消滅を避けるために、まず重要なのが「強群を維持すること」と言われています。蜂の数が多い強群であれば、スムシもスズメバチもある程度は自力で防げます。

ただ、これが実際にはそう簡単ではないのです。分蜂で蜂数が減る春、分蜂で残された群れが無王になるリスク、夏の猛暑と蜜枯れ、冬の寒さと、群が弱る機会は一年中あります。

そこで、季節ごとの外敵や病気を知っておいて、できるだけ対策を打つことでより多くの群数を維持できるのではないかと思っています。本記事がその一助になれば幸いです。

入居後のやるべきことや夏の暑さ対策をまとめた記事でもミツバチの外敵や病気に触れていますので、本記事とあわせてご参考にしてください。

季節別リスク早見表|いつ何を警戒するか

季節ごとの主なリスクは以下となります。

時期主なリスク
6〜8月夏分蜂による無王化、巣落ち・逃去、スムシ、夏枯れ、農薬
9〜11月スズメバチ、盗蜜
12〜2月アカリンダニ、貯蜜不足による餓死、害獣(アナグマ等)
3〜5月アカリンダニに耐えきって蜂数が増えてくるか、分蜂後の弱群化

たとえば「冬にハチミツを残したまま消滅」ならアカリンダニ、「夏に大量の死蜂」なら農薬、「秋に巣箱前で蜂の死骸が山積み」ならオオスズメバチ、という具合に、季節と症状の組み合わせで原因の見当がつきます。

本当の原因が何かは良く分からない時もありますが、その季節と症状から大体は判断ができます。

外敵① スムシ

スムシは「一次原因」ではないことが多い

スムシとは、巣を食べる蛾(ハチノスツヅリガとウスグロツヅリガ)の幼虫の総称です。

「スムシにやられて群が消えた」という声はよく聞きますが、実はスムシは多くの群れにいて、強群であれば被害はほとんど出ないとも言われています。

つまり多くの場合、女王の不調、農薬の影響、アカリンダニ感染、入居後1ヶ月目くらいの新しい蜂が生まれる直前などで群が弱っている時に群れがスムシを排除できず、その結果としてスムシが繁殖すると考えられています。食害がひどくなるとニホンミツバチは巣を捨てて逃去してしまいます。

なお、採蜜後に蜜ロウ作り用に保管する巣板もスムシに食害されます。巣板を冷凍処理するとスムシの卵や幼虫を駆除できますので、保管前に冷凍しておくと安心です。

スムシについては、以下のアオヤギ式巣門台の記事でも詳しく説明しているのでご参照下さい。

私は2026年からこの改良アオヤギ式巣門台を使っています。2025年は夏分蜂で入居したほぼ全ての群れがスムシにやられましたが、2026年はスムシが多量に繁殖することはなく、効果を実感しています。

驚いたのは夏分蜂で無王群となってしまった群れでもスムシが繁殖しなかったことです。

なお、改良アオヤギ式巣門台の実際の使用では、プラスチックコンテナの中にコンクリートブロックを入れて重しとしたり、下が石や木だった場合よりも、下がストレートに土の地面になっている方が群れの調子が良かったです。

毎年スムシに悩まされている方は以下の記事を参考に改良アオヤギ式巣門台を製作して試してみませんか?

外敵② スズメバチ|襲撃の兆候と対策の基本

オオスズメバチとキイロスズメバチの違い

日本国内には蜜蜂を捕食するスズメバチは8種類います。主にはキイロスズメバチとオオスズメバチの2種類がやって来ますが、襲撃方法がかなり異なります。

キイロスズメバチは巣門周辺をホバリングして蜜蜂を1匹ずつ捕まえるタイプです。何度か捕獲を試みてうまくいかないと諦めて別の餌を探しに行くので、被害は働き蜂が少し減る程度で、過度に心配しなくてよいと思います。

一方、オオスズメバチは別です。最初は1〜2匹が偵察に来て働き蜂を捕食して持ち帰り、やがて誘引フェロモンで仲間を呼び、集団攻撃に発展します。攻撃を受けたセイヨウミツバチの群は半日で全滅することもあり、巣箱内に侵入されると蜂児(ほうじ)と貯蜜まで奪われてしまいます。

ニホンミツバチはオオスズメバチに対抗する手段(熱殺蜂球)を持っていますが、書籍「ミツバチの秘密」によれば返り討ちの成功率は50%程度とのことです。必ず撃退できるわけではなく、巣門を齧って広げられて侵入されたりすると全滅の運命をたどりかねません。

また、直接全滅させられなくても、オオスズメバチが飛来するようになるとニホンミツバチは警戒して採餌活動を低下させ、最悪の場合は巣を捨てて逃去してしまいます。ニホンミツバチの飼育ではオオスズメバチ対策は必須と考えた方が良いでしょう。

襲撃の兆候と対策の基本方針

秋に巣箱の周りでオオスズメバチが偵察飛行を始めたら要警戒です。ミツバチが巣門前で尻を上げて警戒態勢をとる、外に出てこなくなる(籠城)といった様子も兆候になります。

また、オオスズメバチに巣門付近にフェロモンを付けられるとその匂いを消すために巣門の周りを舐めていたり、レタスなどの新芽を齧ってきて塗りつけることで匂いを消す様子が見られることもあります。

偵察役が数匹飛来している段階で駆除できれば、その後の集団攻撃を防ぐことができます。そして最も重要な対策は「巣箱の中に入れさせないこと」です。

巣門保護

巣門の開口部の高さは最初から6〜7mmとしましょう。この大きさだと蜜蜂は通れますが、オオスズメバチは通ることができません。

また、巣門をかじって広げられてしまわないように、金属板を貼るとより安心です。

私はダイソーのステンレスフリーステーを取り付けて使っています。110円なので安くて助かっています。

粘着シート

集団攻撃が始まりそうなら、スズメバチ捕獲器や粘着シートを併用すると良いかと思います。

スズメバチ捕獲器はちょっと製造が面倒なので、私は粘着シートを使っています。

捕まえたオオスズメバチを数匹粘着シートにくっつけておくと仲間が次々と誘引され、相当数を捕獲できます。市販のネズミ捕り用の粘着シートが使えます。

やってみたい方は最初の数匹を捕まえる時にオオスズメバチに刺されないようにご注意下さい。

(PR) 私はこちらの粘着シートを使用していますが、他の同様の製品でも大丈夫だと思います。

巣箱全体を保護

また、巣全体を蜜蜂は通れるがスズメバチは通れないネットで覆うことも有効と言われています。巣門から少し離れた位置でスズメバチをシャットアウトすることができます。設置する際は地面との間に隙間を作らないこと、また、台風などで飛ばされないようにしっかり固定する必要があります。

(PR) 上の写真のネットはこちらです。開口部はミツバチは通れますが、オオスズメバチは通れない大きさです。

オオスズメバチ対策としてのアオヤギ式巣門台

アオヤギ式巣門台の考案者の青柳さんは「スズメバチは入らないし、他のキイロスズメバチも入らない」「スズメバチが来てもすぐ諦める」とYouTube動画でおっしゃっていました。

私も改良アオヤギ式巣門台を設置したところ、蜜蜂が巣門を覚えるのに通常よりもかなり時間がかかりましたので(1週間位)、巣門台全体から巣の匂いが出ているのだと思います。

これによってオオスズメバチが巣門の位置を絞りにくくなるという効果があるのでは無いかと期待しています。2026年の秋に実際に確認する予定です。

春の女王を駆除

秋になってからスズメバチを駆除するよりも春にスズメバチの女王蜂を駆除したほうが効率的と言われています。女王一匹を駆除することで巣1つを駆除することになるからという理由です。ただし、あまり駆除しすぎるとスズメバチが捕食している害虫も増えてしまうというリスクがあるかもしれないので、私は程々にやっています。

(PR) 私が使用している市販のスズメバチ捕獲器はこちらです。下の写真は春の女王を捕まえたところですが、このように入れ物いっぱいに捕まえることができます。ペットボトルを使って自作することもできますが、捕獲率が非常に高いためこちらの市販品を愛用しています。スズメバチに悩まされている方は、一度試してみてはいかがでしょうか?

外敵③ 盗蜜

盗蜜と給餌の注意

蜜源が枯れる時期(真夏や晩秋)には、セイヨウミツバチや他のニホンミツバチ群による盗蜜(とうみつ:他群の貯蜜を奪う行動)が起きやすくなります。

弱群が狙われやすく、盗蜜をきっかけに病気が持ち込まれることもあると言われています。特にアカリンダニの地域的な流行は、越冬前に起きやすい盗蜜行動に起因すると考えられています。蜜枯れ期は巣門を狭めて守りやすくすることが望ましいです。

もし、群れの勢いが良くなくて給餌をする場合は、匂いで他群を呼び寄せないような配慮が必要です。

日中に屋外で大量に与えるのは盗蜜の引き金になりがちですので、夜に入れて朝には取り出すのがベターです。また、少しでも砂糖の匂いが外に漏れないようにスノコの上に置くほうが良いでしょう。

外敵④ 害獣

哺乳類|アナグマ被害の実体験

哺乳類の被害も侮れません。

私の場合、群が弱っていた2月に、アナグマ(と思われる動物)が執拗にやって来ました。底板を引き出してハチミツを盗んでいました。以下の写真のように荷締めバンドで底板を引き出せないようにしたのですが、荷締めバンドまで噛み切られたんです。

アナグマはハチミツが溜まっている弱群を見分けて格好の標的にするのだと痛感しました。電気柵を設置して対策するしかないかと考えています。

また、クマの生息域でも電気柵が必須と考えた方が良いかと思います。幸い私の地域はクマはいないのですが、2025年に隣の街でクマが見つかったという報告もあり、今後生息域が広がっていかないかちょっと心配しています。

(PR) 電気柵ですが、私は畑ではアポロの電気柵を使用しています。一度、イチゴが被害にあったのですが、電気柵設置後は被害が無くなりました。今後、必要に応じて巣箱の周りにも電気柵を設置するか考えようと思っています。

メンガタスズメ|夜にハチミツを舐めに来る大型の蛾

意外な外敵として、メンガタスズメという大型のスズメガがいます。背中に人の顔のような模様がある蛾で、「ミツバチの秘密」でも巣に侵入してハチミツを食べる生き物として紹介されています。口吻が短く頑丈で、巣板に穴を開けてハチミツを吸うため、養蜂の世界では「蜂蜜泥棒」と呼ばれています。

ニホンミツバチの飼育者からも「夜間に巣門から突入しようとしていた」「巣門で蛾を引きずり出していた」といった目撃例が報告されているようです。ただ、多くの場合は侵入した蛾がミツバチに返り討ちにされ、巣箱の中で死骸となって見つかるようで、侵入されても強群であれば撃退できるようです。

対策はオオスズメバチと同じで、巣門の高さを6mm程度に抑えて侵入されないようにしておくことだと思います。

小型捕食者・その他

カマキリ、シオヤアブ、オニヤンマ、ツバメなども働き蜂を捕食しますが、群全体への影響は限定的で、あまり気にしなくてよいと考えています。ツバメは交尾に出た女王を捕食することがあると言われていて、少し気にはなりますが。

時々巣箱を観察して、アリ、ゴキブリ、ナメクジ、クモ、ヤモリがいたら排除しています。これらは強群の場合はあまり気にしないようにしています。ただし、アリは群れが弱ると巣内に侵入し、ニホンミツバチが逃去する原因になることがあるので、弱群では注意が必要です。

病気・寄生虫|アカリンダニ、ヘギイタダニ、ウイルス病、腐蛆病

アカリンダニ症|気管に寄生するダニ

アカリンダニは、ミツバチの気管に寄生する微小なダニです。

日本では2010年に長野県のニホンミツバチで初めて寄生が確認され、その後わずか数年で全国に広がりました。遺伝子解析では海外のアカリンダニと同一の配列が検出されており、セイヨウミツバチの輸入などに伴って近年侵入した外来種と考えられています。一方、「ミツバチの秘密」では、1950年頃から国内に存在していた可能性も指摘されています。

成虫の大きさはメスが0.14〜0.18ミリ、オスが0.1から0.14ミリなので、肉眼で目視することは難しく、確認には顕微鏡が必要です。

気管の内壁から体液を吸われ、気管がダニと卵で塞がれると酸素を取り込めなくなり、寄生された蜜蜂は短命化し、歩行や飛翔が正常にできなくなります。典型症状は次の通りです。

  • 巣箱周辺の徘徊(飛べない蜂が歩き回る)
  • 晩秋から早春にかけて、毎日数十匹の働き蜂が死亡して巣箱の底に溜まる
  • Kウイング(後翅が飛び出してKの字に見える症状)。ただし、愛好家の間ではよく挙げられる症状ですが、確実な見分け方ではありません。
  • 冬季のコロニー消滅

「ハチミツを大量に残したまま冬に群が消えた」——冒頭の悩みの、最も典型的な原因のひとつがこれです。寄生された群は発熱による保温ができず、貯蜜があっても十分熱を発生させることができずに、消滅してしまいます。

確定診断には、感染が疑われる働き蜂10〜20匹を解剖して気管を顕微鏡で観察する必要があります。アカリンダニ症は家畜伝染病予防法上の届出伝染病に指定されていますので、疑われる場合は所管の家畜保健衛生所に相談するとよいかと思います。

承認薬は無い

ここが悩ましいところなのですが、現在、日本でニホンミツバチのアカリンダニ症を適応として承認された薬剤はありません。

カナダではギ酸がアカリンダニ防除薬として承認されていますが、日本では承認されていません。ギ酸は劇物ですので、もし使用される場合は取り扱いに厳重に注意が必要です。

メントールを巣箱内で蒸散させる方法、ショートニングと砂糖を練ったパテを与える方法、ギ酸を使う方法、ニホンハッカの葉を使う方法、レモンを使う方法、などが愛好家の間で知られていますが、これらはアカリンダニ症の治療法として承認されたものではなく、あくまで自己責任での使用に関する参考情報となります。

なお、「ミツバチの秘密」によれば、国内のセイヨウミツバチにはアカリンダニ被害が報告されておらず、ミツバチヘギイタダニ駆除用として使用されているチモール剤(チモバール)がアカリンダニにも効果を示している可能性があるとのことです。ただし、ニホンミツバチはチモール剤の匂いの刺激に感受性が高いので、使用量と使用期間に注意が必要とされています。

ミツバチヘギイタダニ(バロア症)

ミツバチヘギイタダニ(学名:Varroa destructor)は、大きさが1.15から1.75mmくらいのダニで、色は小豆のような赤褐色です。ミツバチの体表に取り付いたり、巣箱のスノコの上などを這っているところを肉眼でも観察できます。私も何度も見つけています。

このミツバチヘギイタダニの感染によって生じる病気は「バロア症」と呼ばれ、特に、セイヨウミツバチで甚大な被害を及ぼします。また、少なくとも5種類のウイルスを媒介するとされています。バロア症と呼ばれるのはミツバチヘギイタダニの属名がバロア(Varroa)だからですね。

ミツバチヘギイタダニはもともとトウヨウミツバチの寄生虫で、ここから養蜂のためアジア各地に導入されたセイヨウミツバチに感染しました。

ニホンミツバチは仲間同士のグルーミングでダニを払い落とせるため重大な病状には至りにくいと言われています。「ミツバチの秘密」では、ニホンミツバチの働き蜂における寄生率はわずか0.3%で、予防措置は必要ないとされています。ただし、これはあくまで健全群での話で、弱群では群れの調子を更に落とす原因になっているように感じています。

さて、通常の底板を使用する飼育ではスノコの上などでミツバチヘギイタダニを見つけた経験が結構あります。ということは、ニホンミツバチがグルーミングで払い落としても、ヘギイタダニは底板からまた巣に這い上がってきているんでは無いかと思っています。アオヤギ式巣門台にすれば、振り落とされたミツバチヘギイタダニは地面まで落ちますから、這い上がってくる確率がかなり下がるのではないかと期待しています。

また、ミツバチヘギイタダニにはアピスタン、アピバール、チモバールという3種類の動物用医薬品が認可されており、主にセイヨウミツバチで使われています。

実は私も晩秋に勢いを無くした群れに対してアピスタンを使ったところ、群の勢いが復活した経験があります。ただ、元々ミツバチヘギイタダニへの対抗手段(グルーミングで払い落とす)を持っているニホンミツバチについては、アオヤギ式巣門台でそれをちょっと手助けしてあげれば十分ではないかと最近は考えています。

サックブルード病とそれ以外の「児出し」の見分け

サックブルード病はRNAウイルスであるサックブルードウイルスが幼虫に感染することで起こる蜂児の病気で、発症した幼虫はサナギになる前に死亡します。

感染幼虫は働き蜂によって巣の外に捨てられるため「児捨て」が目立ちますが、児捨て自体はスムシ被害や農薬でも起こります。見分けのポイントは捨てられた幼虫の状態です。ニホンミツバチのサックブルード病で死亡した幼虫は、卵形やいびつな芋虫型に変形し、一部が茶褐色化していることが多く、溶解は部分的で弱いのが特徴とのことです。また、発症が進むと巣箱の底に数十匹の幼虫が常に溜まり、巣箱に近づくと腐敗臭がするようになります。


捨てられた幼虫が、頭側に液体が溜まった袋状になっていればサックブルード病の典型症状です。ただし「ミツバチの秘密」によれば、ニホンミツバチの場合は袋状がはっきりせず、卵形やいびつな芋虫型に変形して一部が茶褐色になっている例が多いとのことですので、袋状でないからといって否定はできません。

私も2025年の夏にかなりの児捨てがあり、袋状では無かったので蔓延したスムシによるものだったと思っていますが、絶対にサックブルード病で無かったとは言えないですね。

このウイルス病に有効な薬剤はなく、いったん感染が広がるとその群れは消滅してしまうことが多いとのことです。初期の発症を確認できれば感染幼虫をすべて取り除くことで予防できるとされていますが、巣枠式ならともかく重箱式ではなかなかに困難かと思います。巣箱の底や周辺に大量の死亡幼虫が見られる段階では回復が見込めないため、感染拡大を防ぐために処分する必要があります。

RNAウイルスなので熱で不活化させる事ができます。サックブルード病で消滅した群れの巣箱や道具は熱湯消毒したり、バーナーで炙って消毒し、また、群間での道具の共有を避けると良いと思います。発生した群れの花粉を他の群れに給餌しないことも予防になります。

腐蛆病|疑ったら家畜保健衛生所へ、自己処分は不可

腐蛆病(ふそびょう)は蜂児を侵す細菌感染症で、アメリカ腐蛆病とヨーロッパ腐蛆病があり、家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されています。

ニホンミツバチについてはアメリカ腐蛆病の罹病例はあるがほとんど感染せず、ヨーロッパ腐蛆病の罹患例は無いとされています。

重要なのは、疑わしい症状(巣房の蓋の陥没や小孔、腐った幼虫が糸を引く、刺激臭など)を見つけたら、必ず家畜保健衛生所へ連絡することです。法定伝染病ですから、自己判断での処分はできません。

アメリカ腐蛆病菌は芽胞(がほう:熱や消毒に極めて強い殻状の休眠形態)を作るためちょっとやそっとの加熱処理では根絶が難しいと言われています(バーナーで炙っても、熱湯で煮沸しても死滅しない)。発生蜂群は巣箱ごと焼却するように指示されるかと思います。

なお、腐蛆病の芽胞はハチミツの中でも長期間生き残ります。市販のハチミツや他の群れのハチミツを給餌に使うと、そこから腐蛆病を持ち込んでしまう可能性が否定できないので、給餌にはハチミツではなく砂糖水を使った方がよいですね。

ノゼマ症

ノゼマ症は微胞子虫が消化管に寄生する病気です。1種類ではなくて、セイヨウミツバチノゼマとトウヨウミツバチノゼマがいて、セイヨウミツバチノゼマは届出伝染病です。セイヨウミツバチノゼマでは下痢便、徘徊、働き蜂の死亡が特徴です。

ニホンミツバチは、激しい下痢便症状を起こすセイヨウミツバチノゼマへの感受性は低く、また、トウヨウミツバチノゼマには感受性は高いものの元々の宿主なので重症化しづらいとされています。

徘徊や蜂数の減少はアカリンダニと似ています。こういった症状が見られた場合、ニホンミツバチについてはノゼマよりもアカリンダニの可能性が高いかと思いますが、正確には家畜保健衛生所での確定が必要ですね。

外敵でも病気でもない消滅|農薬、餓死、女王喪失、夏の巣落ち

見落とされがちなのが、管理側・環境側の要因です。

農薬については、農林水産省の調査で、蜜蜂被害の発生は水稲のカメムシを防除する時期(7〜9月頃)に多く、死虫からはカメムシ防除に使用可能な殺虫剤が検出されたと報告されています。

ネオニコチノイド系を含む殺虫剤の散布期に、巣箱前に大量の死蜂が出たらこれを疑いましょう。周辺農家との情報共有や、水田に囲まれた場所を避ける設置が有効な対策とされています。

餓死は冬〜早春の大敵です。何らかの理由で十分な蜜が集められない場合があります。その際には越冬前に貯蜜量を確認し、不足していれば蜂がまだ活動できる晩秋までに給餌するという対応が考えられます。給餌の際は加熱による品質劣化(HMFの問題)にも注意が必要で、詳しくはHMFの記事で解説しています。

女王喪失による無王群も、じわじわと群が縮小して消滅する原因になります。兆候や対処は今後別記事で解説する予定です。

夏の巣落ち(暑さで巣板が落下する事故)は逃去の引き金になるため、暑さ対策の記事をあわせてご覧ください。

予防の基本や法律、薬剤について

予防の基本

ここまでの内容を裏返すと、予防の基本はシンプルです。

  • 強群を維持する(すべての対策の土台)
  • 設置場所を選ぶ(風通し、直射日光回避、水田密集地を避ける)
  • 定期的な点検と記録(異変の早期発見につながります。飼育記録ノートを1冊用意すると便利です。私は管理アプリを作りました。)
  • 道具の消毒と、群間での使い回しを避ける
  • 他所からの群の購入を避ける(病気やダニの持ち込みリスクが高いため。地元の分蜂群の自然入居が基本です)
  • 給餌はハチミツではなく砂糖水で(ハチミツには腐蛆病の芽胞が含まれている恐れがゼロでは無いため)

法律について

法律面も注意が必要です。

腐蛆病は法定伝染病、アカリンダニ症、ノゼマ症、チョーク病、バロア症は届出伝染病で、いずれも発生を疑ったときは家畜保健衛生所へ連絡しましょう。

また、ミツバチを飼育する方は、養蜂振興法に基づき原則として毎年1月末までに飼育届を都道府県に提出する必要があります。ニホンミツバチも重箱式も対象で、届出をしないと過料に処されるおそれがあります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

薬剤について

薬剤については、日本で承認されているミツバチ用医薬品は腐蛆病予防薬とダニ駆除薬に限られ、市場規模が小さいため種類がごく少ないのが現状です。

アカリンダニ症を適応として承認された薬剤は存在しません。チモバール、メントールなどの使用はあくまで「自己責任」での使用になります。

家畜伝染病予防法と感受性

京都産業大学の高橋先生の著作、「ミツバチの秘密」の第6章にミツバチの病害虫・天敵について詳しく解説されています。

腐蛆病など届出義務があったりもしますので、これらの感染が疑われるときには最寄りの家畜保健衛生所に相談するのが良いですね。

以下に「ミツバチの秘密」の第6章から表1を引用させていただきます。第6章の表1には、家畜伝染病予防法に該当する疾病が記載されています。家畜伝染病予防法に記載されているということは特に注意が必要な疾病ということだと思います。

この表が特に参考になるのは、それぞれの疾病に対するニホンミツバチとセイヨウミツバチの感受性(どのくらい疾病にかかりやすいか)の違いが示されていることです。ニホンミツバチは比較的病気に強いことがよく分かりますね。一方、ニホンミツバチに影響が少ない疾病だったとしても、近隣で飼育されているセイヨウミツバチへの影響を考えると腐蛆病やミツバチヘギイタダニ(バロア症)は特に注意が必要なことが分かります。


「ミツバチの秘密」の第6章より引用:

表1 国内におけるミツバチの家畜伝染病予防法に該当する疾病と感受性

病名原因感受性*法定区分
ニホン
ミツバチ
セイヨウミツバチ
細菌アメリカ腐蛆病アメリカ腐蛆病菌
Paenibacillus larvae
低極高家畜伝染病
ヨーロッパ腐蛆病ヨーロッパ腐蛆病菌
Melissococcus plutonius
無高
ダニバロア病ミツバチヘギイタダニ
Varroa destructor
低極高届出伝染病
アカリンダニ症アカリンダニ
Acarapis woodi
高無
真菌チョーク病ハチノスカビ
Ascosphaera apis
無高
微胞子虫ノゼマ症セイヨウミツバチノゼマ
Nosema apis
無低
ウイルス麻痺病麻痺病ウイルス
Paralysis virus
無高その他
サックブルード病サックブルードウイルス
Iflaviridae: Iflavirus
高低
チヂレバネウイルス病チヂレバネウイルス
Deformed wing virus
低高

*5段階(極高、高、中、低、無)で示す。

(PR)高橋先生の書籍「ミツバチの秘密」は、ニホンミツバチ飼育について知っておくべきことやヒントになることがたくさん記載されています。書籍版はこちら。電子版はこちらです。

まとめ|原因を季節と症状で絞り込む

最後に、ニホンミツバチの外敵と病気を切り分けるためのチェックリストとして、要点を振り返ります。

  • 冬にハチミツを残して消滅 → アカリンダニを疑い、家畜保健衛生所へ相談
  • 秋に巣門前で死骸多数・大型の蜂の姿 → オオスズメバチ
  • 夏に大量の死蜂 → 農薬(周辺の防除時期を確認)
  • 児捨てが続き、幼虫がいびつに変形・茶褐色化 → サックブルード病を疑う
  • 巣がスムシだらけ → スムシは結果。群が弱った真の原因を探す
  • ハチミツも残っていない消滅 → 蜜源不足による逃去や餓死の可能性

今季すぐに着手できる予防は、(1) 巣門を狭めてオオスズメバチの侵入経路を断つ、(2) 点検記録をつけて異変を早期発見する、(3) 越冬前の貯蜜チェック、の3点です。

ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比べて病気や害虫に比較的強いとは言われていますが、外敵も病気もゼロにはできません。季節と症状で原因を想定して、早めに手を打てば群れを維持できる確率も上がると思います。

参考文献

(PR) 本記事の作成にあたっては京都産業大学の高橋先生の著作の「ミツバチの秘密」の第6章を参考にさせて頂きました。ミツバチを長く研究されてきた先生の著作であり、知らないことがいっぱい丁寧に説明されていて大変勉強になりました。ニホンミツバチを飼育している方は必読ですね!

書籍版はこちらです。

Kindle電子版はこちらからご覧ください。

参考記事

スムシやアカリンダニについてはこちらの記事でも詳しく説明していますので、参考にして下さい。

スムシ対策にかなり有効なアオヤギ式巣門台について詳しく知りたい方はこちら。

私がアオヤギ式巣門台を改良した「けーあい式」巣門台の詳しい作り方はこちらをご覧ください。スムシだけではなくて、ミツバチヘギイタダニにも有効ではないかと考えています。

ニホンミツバチ飼育全般について以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

参考:YouTube動画

私がニホンミツバチを飼育している様子をYouTube動画にしていますので、良かったらご訪問いただければと思います。

YouTubeチャンネルはこちらです。

南箱根の田舎暮らし – はちみつ果樹園だより

本記事の内容を分かりやすく解説するYouTube動画を配信してます。ぜひ御覧下さい。

終わりに

ここまで読んでくださりありがとうございました。この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

それでは、楽しい養蜂ライフを!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

自然に囲まれた場所で、果樹を育てたり日本蜜蜂を飼ったりしながら暮らしています。
田舎の暮らしも不便さばかりではなく、便利な道具や家電を取り入れることで、快適さと楽しさの両立を目指しています。
このブログでは、養蜂や果樹栽培といった趣味の実体験に加えて、暮らしをちょっと便利にしてくれる道具の紹介や、将来に備えた気軽なマネーの工夫についても発信しています。
田舎でも都会でも、暮らしを「ちょっと楽しく、ちょっと賢く」するヒントをお届けできれば嬉しいです。

コメント

コメントする


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

目次