日本蜜蜂が入居したら最初にやること7選【初心者ガイド】

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待ち箱に日本蜜蜂(ニホンミツバチ)が入ってくれた瞬間は、本当に小躍りしたくなるほど嬉しいものですよね。私も初めて入居を確認したときは、しばらく巣箱の前から離れられませんでした。

ただ、ここからが本当のスタートです。実は、入居直後の数日〜1ヶ月の行動が、その群れがその場所に定着してくれるか、それともあっさり逃去してしまうかを大きく左右します。「何もしないのが一番」と言われる一方で、放っておくとスムシやアカリンダニにやられてしまうこともある。このバランスが、初心者には本当に難しいところです。

この記事では、日本蜜蜂が入居した直後から1ヶ月程度の間にやるべきこと・やってはいけないことを、私自身の失敗談も交えながら、できるだけ具体的にお伝えしていきます。

この記事を読むと、以下のことが分かります。

  • 自然入居を確実に判定する方法(探索蜂との見分け方)
  • 入居直後にやってはいけないこと(私の逃去失敗談つき)
  • スムシっ子カードとメントールブロックを入れる正しいタイミング
  • 四面巣門への切り替え時期と種類
  • 継箱のタイミングと「一気積み」の考え方
  • 巣門タイプ別の内検のやり方

肩の力を抜いて、少し先に始めた同じ趣味仲間の話を聞くつもりで読んでいただければ嬉しいです。

目次

STEP1|自然入居を確実に確認する方法

待ち箱の周りに日本蜜蜂が飛んでいると、つい「入居した!」と興奮してしまいますが、実はまだ油断はできません。探索蜂(たんさくばち)が下見に来ているだけの段階かもしれないからです。

ここでは、入居確定の3つのサインを順に紹介します。

巣門から一直線に蜂が飛び立つ

入居前後で蜂の飛び方が大きく違うのは、観察していると意外と面白いポイントです。

入居後の外勤蜂の飛び方は、巣門から離陸するとほぼ一直線にスーッと飛び去り、戻ってくるときも迷いなく真っ直ぐ巣門に着地します。「通勤」しているような、目的のはっきりした飛び方ですね。この「まっすぐ飛ぶ」が見えたら、かなりの確率で入居していると考えて良いでしょう。

探索蜂の飛び方は、巣箱の周りをホバリングしながら、あちこちを舐めるように調べる動きが特徴です。1匹2匹がフラフラと巣箱の外壁や巣門のあたりを点検し、しばらくすると別の場所へ飛んでいきます。「これは住める場所か?」と査定している段階ですね。このような飛び方の場合はまだ入居していません。

ここで探索蜂の飛び方と間違えやすいのが、定位飛行オリエンテーションフライト、時騒ぎ)です。定位飛行は、巣箱の位置を覚えるために巣箱の前で行う「8の字」「らせん」状の飛行です。巣箱を正面に見て、頭を巣門に向けたまま、左右や上下にゆらゆらと動きます。通常は新しく外勤デビューする蜂が行うのですが、分蜂から入居した日や翌日は定位飛行を行います。「なんか探索蜂にしては飛び方が違うな」と思っていたら、既に入居済みの群れの定位飛行だったということもありますので、よく観察しましょう。

花粉を運ぶ蜂が出入りしているか

入居確定の最も分かりやすいサインは、後脚に花粉団子をつけた蜂が、巣門に出入りしていることです。

花粉は幼虫を育てるための栄養源です。花粉を運び込んでいるということは、巣の中で女王蜂が産卵し、育児が始まっている強い証拠になります。第2分蜂以降の娘女王の入居の場合には無事に交尾飛行を済ませたという証拠になりますので一安心です。

白っぽい花粉、黄色い花粉、オレンジの花粉、赤茶色の花粉と、訪花した植物によって色も様々で、見ているだけで楽しいですよ。

探索蜂は花粉を運びません。ですから、花粉団子を後脚につけた蜂が複数往復しているのを確認できれば、間違いなく入居していると考えてよいでしょう。

ファイバースコープで安全に内部を確認する方法

それでも「本当に入ったのか、自分の目で確かめたい」という方には、ファイバースコープ(細長いカメラ付きケーブル)を使った内検をお勧めします。

ポイントは、カメラ部分の直径が巣門の高さ(通常6〜7mm程度)よりも細いものを選ぶことです。Amazonなどで3,000円前後で売られているUSB接続式のファイバースコープでも十分実用になります。スマホやPCに接続して、画面で巣箱内部を確認できます。

巣門からそっとケーブルを差し込み、巣箱の上のほうに向けてみると、スノコにぶら下がる蜂の塊が見えるはずです。これが確認できれば、入居は確定です。

養蜂を始めるなら、ファイバースコープは1本持っておくと心強い道具のひとつです。巣門の高さに入る細径タイプを選ぶのがコツです。

夜間内検を推奨します

ファイバースコープでの内検は、できれば日没後の暗い時間に、短時間で済ませることをお勧めします。理由は3つあります。

  1. 外勤に出ている蜂がすべて巣に戻っているので、群れ全体の様子が分かる
  2. 蜂が活動していないので刺激が少なく、攻撃を受けにくい
  3. 周囲が暗いため、巣箱内の様子が画面で見やすい

暗いので気をつけて、また、念のため防護服を着て観察しましょう。

ファイバースコープで観察した入居翌日の蜂球

STEP2|入居直後は「そっとしておく」が鉄則

入居が確認できると、嬉しさのあまりついつい巣箱に近づきたくなりますよね。ですが、ここで動きすぎると群れを失います。これは私の苦い経験からも、心からお伝えしたいことです。

入居当日にやってはいけないこと

入居直後の日本蜜蜂はとても神経質です。日本蜜蜂は野生のミツバチで、基本的に世話を必要としません。初心者が良かれと思って行うことが、逆効果になることが多いとされています(※1)。

具体的には、以下の行為は避けましょう。

  • 巣箱を持ち上げる、傾ける
  • 巣箱を別の場所に移動する(強制捕獲の場合を除く)
  • 巣門を改造する、四面巣門に交換する
  • 内検と称して長時間覗き込む
  • 強い香水・整髪料をつけて巣箱に近づく
  • 黒っぽい服装で巣箱の正面に立つ

日本蜜蜂は振動を特に嫌うとされており、外敵に襲われていると勘違いして逃去の引き金になります(※1)。

【実体験】入居当日の夜に四面巣門へ交換して逃去させてしまった話

これは私が養蜂を始めて最初の年に経験した、忘れられない失敗談です。

日中に自然入居を観察できた群れがいて、嬉しさのあまり「夏場の通気をよくしてあげよう」「スムシ対策には四面巣門がいいと聞いた」と思い、その日の夜に巣門枠を四面巣門タイプに交換してしまいました。日中の蜂が活動している時間を避け、夜に静かに作業したから大丈夫だろう、と素人なりに考えていたんですね。

ところが翌朝、巣門の出入りが妙に少ない。嫌な予感がしてファイバースコープで覗いてみると、中はもぬけの殻でした。群れごと逃げ去っていたのです。

今思えば、入居当日というのは群れにとって最も不安定なタイミングで、ようやく落ち着いた住処に重大な改変を加えてしまったわけですから、逃げられて当然でした。「夜だから刺激が少ない」というのは私の思い込みで、巣箱に手を加える作業はたとえ夜間でも群れにとって大きなストレスになります。

この失敗以来、私は「入居直後の群れには、最低でも1週間は手を出さない」を鉄則にしています。

何日間そっとしておけばよいか

目安としては、入居から最低1週間、できれば2週間はそっとしておくのが安全だと思います。この期間は遠目から出入りを観察するだけにとどめ、巣箱に触れる作業は最小限にしてください。

STEP3|入居後の一時的な蜂数減少を理解して焦らない

入居後しばらくすると、「あれ、最初より蜂の数が減ったような…?」と心配になる時期がやってきます。これは病気でも逃去の前兆でもなく、ごく自然な現象なので、理由を知っておくと安心です。

夏の働き蜂の寿命は約1ヶ月

夏場の働き蜂の寿命は、おおむね1ヶ月程度と言われています。入居してきた群れの働き蜂は、もとの母巣で生まれて分蜂に参加した蜂たちですから、入居の時点ですでに数週間生きていることも珍しくありません。

つまり、入居後しばらくすると、分蜂時に来た蜂たちが寿命を迎えて自然と減っていきます。これは避けられない現象です。

入居から3週間後に蜂数が増え出す

女王蜂が産卵を始めるのは、巣板がある程度できた入居後数日〜1週間後あたりです。卵から成虫になるまでは19日から20日かかります。

ですから、入居から3週間後あたりが「蜂数の底」で、ここを境にして新しい働き蜂が次々と羽化してきて、群れは再び勢いを取り戻していきます。

蜂数が少ない時期がスムシの絶好のチャンス

問題は、この「蜂数が一旦減る期間」です。働き蜂の数が減ると、巣板を覆いきれなくなり、巣板の表面が露出する部分が出てきます。スムシは蜂が覆いきれていない巣板があると巣版内に侵入してしまいます。一旦侵入してしまうと、蜜蜂にはスムシを取り出すことが難しくなってしまいます。

ですから、この時期こそスムシ対策をしっかり整えるべきタイミングなのです。次のSTEPで詳しく見ていきましょう。

STEP4|スムシ対策:スムシっ子カードの使い方と投入タイミング

スムシとは何か

スムシとは、ハチノスツヅリガとウスグロツヅリガという蛾の幼虫のことです(※3)。これらの蛾は夜間に巣門や巣箱の隙間から侵入し、巣板や底に溜まった巣のカスに卵を産み付けます。孵化した幼虫が巣板を食い荒らし、ひどくなるとミツバチは逃去してしまいます(※3)。

ただし覚えておきたいのは、スムシ自体が群れ崩壊の根本原因である場合は多くないという点です。健康で強い群れであれば、ミツバチたちが小さなスムシを咥えて外に運び出してくれます(※3, ※4)。女王蜂の不調、農薬被害、アカリンダニ寄生など、何らかの理由で群れが弱ったときに、結果としてスムシに食い荒らされるケースが大半です(※3)。

つまり、スムシ対策の本筋は「群れを強く保つこと」。その上で補助的に行うのが、これから紹介する物理的・化学的な対策です。

スムシの発生時期

ハチノスツヅリガは日本では年2回以上、おおむね3月上旬から10月下旬にかけて発生するとされています(※5)。気温が15℃を超えるあたりから活発になり、夏場が最も活動的です。冬場は活動が鈍るので、スムシのリスクも下がります。

スムシっ子カードの仕組み

「スムシっ子カード」は、これまで決定打のなかったスムシ対策に画期的な変化をもたらした製品です(※3, ※5)。

仕組みとしては、小さなスムシ(10mm未満の初齢幼虫)を特殊な物質で誘引し、BT剤(昆虫病原性微生物を用いた生物農薬)で殺虫します(※5)。化学殺虫剤を使わないため、ミツバチやハチミツに影響を与えず安全に使えるのが特徴です。

「スムシっ子カード」は現在改良版の「スムシっ子カードII」が発売されています。1セットはこちら。20セットはこちらです。

ただし注意点もあります。10mm以上に育ったスムシには効果が及びません(※5)。ですから「すでに大量のスムシが繁殖してから慌てて入れる」のではなく、入居後早めに予防的に入れるのが正しい使い方です。

入居時期別・投入タイミングの目安

スムシっ子カードを入れるタイミングは、入居時期と気温(=スムシの成虫の活動状況)から考えるとよいでしょう。

入居時期スムシっ子カード投入の目安
3月の早い分蜂で入居入居後2〜3週間で投入。
4〜5月に入居入居後1週間程度で群れが落ち着いてから投入。
6月以降に入居スムシの活動最盛期なので、入居後直ぐに投入

カードは1セット2枚入りで、1枚目を入れたら約3ヶ月後に2枚目に交換します(※5)。スムシの成虫が活発に飛び回っている時期(初夏〜盛夏)に入居した場合は、ぐずぐずせず早めに入れたほうがよいでしょう。

なお、製品説明では入居後すぐの使用が案内されていますが、私自身は入居直後の逃去リスクを重く見て、スムシの最盛期前は群れが落ち着いてから投入する方針にしていますが、施品説明通りに入居後直ぐに使用しても良いかと思います。

スムシっ子カードの詳しい使用方法は製品に付属する説明書をご参照ください。

侵入経路対策

同時に、スムシの侵入経路を物理的に塞ぐ対策も併用すると効果的です。

スムシの侵入経路は主に3ヶ所と言われています(※4)。

  1. 巣門(夜間に成虫が侵入)
  2. 継箱の段と段の隙間
  3. 蓋(天井板)の隙間

特に梅雨時期は木材が湿気で膨張して隙間が広がりやすく、わずか1〜2mmの隙間から成虫が産卵に入り込むケースが報告されています(※4)。継箱の合わせ目には、梱包用のテープを貼っておくと安心です。

STEP5|アカリンダニ対策:メントールブロックを入れるタイミングと理由

アカリンダニとは

アカリンダニ(Acarapis woodi)は、ミツバチの胸部気管内に寄生する体長0.1〜0.2mm程度の極めて小さなダニです(※6, ※7)。2010年に長野県で日本のニホンミツバチへの寄生が初めて報告され、その後急速に全国に広がりました(※8, ※6)。

アカリンダニ感染の代表的な症状は次の3つです(※6, ※7)。ただ、このような症状が出なくてもアカリンダニに感染していることもあります。

  • 巣箱周辺の徘徊 — 飛べなくなった蜂が地面を歩き回って大量死
  • Kウイング — 後翅が閉じずに横に飛び出し、アルファベットの「K」のように見える
  • 黄色い下痢便 — 巣箱や巣門に黄色い下痢便が付いている

アカリンダニ観戦で特に怖いのが越冬失敗です。アカリンダニに寄生されたミツバチは気管が詰まって呼吸困難になり、冬場に筋肉を動かして発熱することができなくなります(※6)。その結果、ハチミツを残したまま凍死・餓死してしまうのです。

夏は新しい蜂もどんどん生まれてきますし、働き蜂の寿命はおよそ1ヶ月ですから、アカリンダニに感染していてもあまり目立ちません。冬になる前に早めに対策しておくと良いです。

メントールの効果

アカリンダニ対策としてはメントールがよく使用されます。ギ酸も効果がありますが、劇薬です。一方、メントールはハッカ成分であり、ガムなどの食品にも使われていますね。

メントールは、気化してミツバチに吸入され、寄生ダニを殺したり、群れ全体としてアカリンダニを弱体化させる効果があるとされています。つまり、忌避剤ではなく、燻蒸型の殺ダニ剤です。ただ、実際の群全体で見ると、メントールは「すでに重度感染した蜂を完全に治す」ほどの効果はではなく、巣箱内のダニ密度を下げる効果があると考えたほうが良さそうです。

メントールの主な効果は、巣箱の中で寄生されたニホンミツバチから、新たに誕生した寄生のない若い蜂へのダニの移動を防ぐことであると説明されている方もいらっしゃいます。新たに生まれてくる蜂は寄生のないクリーンな状態なので、ダニが乗り移れないようにすれば、群れは徐々に健全な状態へ向かっていく、という理屈です。

どちらの効果が主体なのかは分かりませんが、多くの日本蜜蜂愛好家の方々が使用されていて実績のある方法です。

なお、日本ではアカリンダニ対策としてのメントールは登録薬剤ではありませんので、使用される場合は自己責任でお願いします(※7, ※9)。特に収穫したハチミツを販売される場合は、食品衛生上、ハチミツにメントールが混入しないようにする必要があるようです。また、アカリンダニ症は届出伝染病に指定されているため、寄生が疑われる場合は近隣の家畜保健衛生所にご相談されることをお勧めします(※6)。

入居から3週間後が投入の目安

メントールの効果メカニズムを理解すると、投入タイミングが見えてきます。

メントールによって「新しく生まれてくる蜂への寄生拡大を防ぐ」ことを目的とする場合、新蜂が羽化してくる少し前、つまり産卵開始後の卵が成虫になる直前のタイミングで入れておくのが理にかなっています。

具体的には、入居から3週間後あたりが一つの目安です。週末養蜂さんの資料でも「入居から1ヶ月後を目安に対策を始めてください」と推奨されています(※6)。

これより早く入れると、入居直後でまだ不安定な群れがメントールの匂いを嫌って逃去してしまうリスクが高くなりますので、注意が必要です(※6)。

メントールブロックの量・設置場所

メントールは結晶状態でインターネットなどで入手できます(1gあたり10円程度)(※6)。そのまま入れるとミツバチが撒き散らしたり、お茶パックに入れてもかじって破いたりするので、一度溶かして塊にするのが定番の方法です(※6, ※10)。

細かい結晶のままよりも揮発も緩やかになりますので、蜜蜂の逃去を防ぐ面でも有利です。

作り方の概要は次の通りです。

  1. ガラスの計量カップなどにメントール結晶を計量して入れる(例えば、150 g)
  2. 小鍋でお湯を沸かす
  3. お湯に計量カップを漬けて、結晶を溶かす
  4. 火を止めて計量カップから小分けする(お弁当のアルミおかずカップを使うと15gくらい)
  5. 冷まして固める

私は、1個15gで作って2回に分けて入れています(最初に1個、しばらくしてから1個追加でトータル30g)。

固まった塊を皿に乗せ、重箱式巣箱のスノコ(天板)の上に設置します(※6)。気化したメントールは空気より重いので、上部に置くと巣箱内に降りていきます(※6, ※9)。

徐々に揮発して無くなっていくので、時々確認して交換または補充します(※6)。

多すぎると逃去を招く

ここは絶対に押さえておきたいポイントです。メントールは多すぎるとミツバチに悪影響を及ぼし、逃去の原因になります(※6, ※9)。

  • 30g程度を標準量とし、それ以上は入れない(※6)
  • 40℃を超えるとメントールが液化して揮発量が一気に増えるため、真夏は一時的に取り出す(※6, ※9)
  • 入居直後の不安定な群れには使わない(※6, ※9)

養蜂家の方の指摘として、メントール臭が強くなりすぎると日本蜜蜂に大きなストレスが加わり、わずかな刺激でも逃去に至りやすくなると言われています(※2)。メントールの使用量と夏場の管理は、本当に慎重に行ってください。

STEP6|四面巣門への切り替えタイミングと選び方

四面巣門を使うメリット

四面巣門とは、巣箱の最下段の四方すべてを巣門にした構造です。メリットは大きく3つあります。

  1. 通気性が良い — 夏場の高温対策、湿気の排出に有利
  2. スムシ対策 — 底板の上に風が通り、巣のカスが溜まりにくい。底で育ったスムシが上に登りにくい構造になる(※11)
  3. 観察しやすい — 横から巣の様子を確認しやすい

特に巣箱の蓋に換気口がなく、夏季の通気が悪い場合は致命的なストレスになり、強めに内検しただけで許容量を超えて逃去することがあるとも指摘されています(※2)。四面巣門は通気改善の有力な選択肢です。

四面巣門の種類

代表的な四面巣門のタイプを整理してみます。

タイプ特徴入手法・製作のしやすさ
木製色々な構造が考えられる。自作向き
鉄製台(週末養蜂)アングル材で組まれた専用台。底板の上に常に風が通る構造株式会社週末養蜂から購入が手軽。フリマサイトなどでも入手可。自作は溶接器具が必要。
集水桝+専用四面巣門底板自体がなく、巣カスが地面に直接落ちるフリマサイトなどで入手可。自作は溶接器具が必要。

週末養蜂さんの鉄製台は、アルミアングルや鉄アングルをボルトで組み上げた構造で、自作も可能とされています(※12)。フリマアプリやネットオークションで中古の鉄製台が出品されていることもあり、「自作はちょっと…」という方は既製品の購入や中古品を狙うのも一つの手です。

四面巣門はそこそこ高額なので市販品を購入するか自作にチャレンジするか悩むところです。腕に覚えがある方はチャレンジしてみるのも面白いと思います。

私も今年「アオヤギ式」巣門台を改良した巣門を製作してみようと思っています。

入居後いつ切り替えるか

ここが本日の重要ポイントです。入居直後に四面巣門に切り替えてはいけません。私のあの失敗談を思い出してください。

切り替えの目安は、入居から最低1週間、できれば3週間以上経って、群れが完全に落ち着いてからです。具体的には、

  • 花粉の搬入が毎日安定している
  • 新蜂のオリエンテーションフライトが見られる
  • ファイバースコープで蜂球がしっかり育っているのを確認

これらの条件が揃ってから、できるだけ短時間で交換するのがよいでしょう。

STEP7|継箱のタイミングと段数の考え方

継箱が必要なサイン

待ち箱は通常2段の重箱式で運用しますが、入居後2段のままでは早ければ1ヶ月で巣を伸ばすスペースが足りなくなります。

継箱のタイミングを判断する目安は、巣が下から数えて一番下の段の半分以上まで伸びてきた頃、あるいは巣が底板に近づいてきた頃です。底にはみ出してから慌てて継箱しようとすると、巣門枠や台の部分まで巣ができてしまい、管理が一気に難しくなります(※1)。

1段ずつ継ぐ vs 一気に4〜6段にする

ここは流派が分かれるところです。

一般的な方法(1段ずつ継箱)は、巣が底板近くまで伸びてから1段だけ追加する方法です。この方法のメリットは、巣箱の側面に巣がしっかりとくっついて成長する点。巣が左右均等に「四方の壁に貼り付きながら」伸びていくので、構造的に安定します。

週末養蜂スタイル(一気に4〜6段)は、入居後比較的早い段階で必要な段数をまとめて積み上げてしまう方法です。週末養蜂さんの資料でも「巣の成長に合わせて1段ずつ追加するのではなく、一度に3段追加しても問題ない」とされています(※1)。

私個人としては、月に1〜2回しか巣箱に行けない週末養蜂派にとっては、後者の一気積み上げのほうが管理しやすいと感じています。継箱作業は巣箱を持ち上げる必要があり、群れにとっては大きな刺激ですから、回数を減らせるメリットは小さくありません。

片伸びが起きると夏に巣落ちしやすい

ただし一気に積み上げる方法には欠点もあります。それは巣の「片伸び」です。

巣箱の内部が広すぎると、ミツバチは重箱全体に均等に巣を作らず、巣箱の4つの側面全部に十分にくっつかないまま下方向だけに伸びていくことがあります。上の巣箱がいっぱいにならないうちに下の巣箱に巣を伸ばすということですね。この状態を「片伸び」と呼びます。

片伸びの巣板は、夏の高温で巣板の付け根が柔らかくなったときに巣落ち(巣板が自重で剥がれ落ちる)を起こしやすいと言われています。巣落ちは群れにとって致命的なダメージになりますので、これを避けたい場合は1段ずつ継ぐほうが安全という考え方もあります。

夏の巣落ち対策としては、板厚のある巣箱を使う、巣箱の上に断熱材を載せる、巣箱を日陰に置くなど、複合的な対策を組み合わせるのが王道です。板厚35mm程度の高断熱仕様の巣箱は、近年の猛暑下でも巣落ちリスクを下げる効果が期待できるとされています(※11)。

継箱の考え方は、巣箱の内寸、1段の高さ、蜂場に通える頻度、群れの勢いによって変わります。週末しか見に行けない場合は一気積み、こまめに観察できる場合は1段ずつ、というように自分の管理スタイルに合わせて選ぶのが現実的です。

内検のやり方:巣門タイプ別の確認方法

内検の目的と確認すべき4つのポイント

内検(ないけん)は、群れの状態を把握するための重要な作業です。ただし、頻繁にやりすぎると逆効果になるのも事実。確認すべきポイントを絞って、短時間で済ませるのが鉄則です。

確認したいポイントは主に4つです。

  1. 蜂球の大きさ — 群勢の目安
  2. 巣板の成長度合い — 継箱のタイミング判断
  3. 巣カス・スムシのフン(底板) — スムシ被害の兆候
  4. 底板に落ちた異物 — 雄蜂巣房のフタ(分蜂期)、徘徊死した蜂(アカリンダニ)など

引き出し式・扉式・四面巣門それぞれの内検手順

引き出し式底板の場合は、底板を静かに引き出して、巣のカスや落下物を観察します。底板を抜くときに群れを大きく刺激しないよう、ゆっくり動かすのがコツです。

扉式の場合は、扉を開けてスマホを入れて撮影するのが便利です。

四面巣門の場合は、構造によります。週末養蜂さんの鉄製台なら底板を引き出せるので、下からスマホやデジカメで真上に向けて撮影できます(※1)。

四面巣門でない場合はファイバースコープ夜間確認

スマホを入れることができなかったり、底板を簡単に引き出せない構造の巣箱の場合は、夜間にファイバースコープを巣門から差し込む方法が便利です。

夜間を推奨する理由は、STEP1でも触れたとおり、蜂の活動が落ち着いていて刺激が少なく、また蜂が全員巣内にいるので群勢を正確に把握できるからです。作業時間はできるだけ短くして、終わったら速やかに巣箱から離れます。念のため防護服を着た方がよいでしょう。

内検の頻度

入居直後の1ヶ月は、外からの観察(花粉搬入の有無、出入りの活発さ)を中心にし、ファイバースコープでの内検は週に1回程度に留めるのがよいでしょう。群れが安定してきたら、月に1〜2回、底板の掃除と合わせて行う程度で十分です。

まとめ:入居後1ヶ月のロードマップ

ここまでお伝えしてきた内容を、時系列のチェックリストにまとめてみます。

入居後1ヶ月の作業カレンダー

時期やることやってはいけないこと
入居当日〜3日目遠目から出入りを観察、入居判定巣箱に触れる、移動する、四面巣門に交換する
4日目〜2週間目花粉搬入を観察、出入りの様子を記録長時間覗き込む
2〜3週間目スムシっ子カードの投入、ファイバースコープで簡単な内検メントールはまだ早い
3〜4週間目新蜂のオリエンテーションフライト確認、メントールブロックの投入いきなり高用量のメントールを入れる
1ヶ月後〜群れが安定し蜂数が増えてきたら、四面巣門への切り替えや継箱を適宜行う。真夏の高温時にメントールを上部設置のまま放置

初心者が特に注意すべき3つのポイント

  1. 「触らない勇気」を持つ — 入居直後の改変は逃去の最大原因。私の失敗を繰り返さないでください。
  2. スムシとアカリンダニは「予防」が基本 — 発生してから慌てても手遅れになりがち。タイミングを意識して先手を打つ。
  3. メントールは量と時期を守る — 多すぎても、早すぎてもダメ。30gを基本に、入居から3週間以降に。

次のステップ

ここまで読んでくださった方は、もう「入居後の最初の難所」は乗り越えたも同然です。次に待っているのは、

  • 越夏 — 夏の高温・巣落ち対策、オオスズメバチ対策の準備
  • 採蜜 — 越冬用の貯蜜を残しつつ、初めての採蜜
  • 越冬準備 — 防寒、アカリンダニ最終チェック、エサ不足対策

といったテーマです。それぞれ別の記事で詳しく扱っていきます。

養蜂は、自然と向き合う時間そのものが何よりの報酬です。ミツバチたちは私たちが思うよりずっと賢く、たくましく、自分たちで生きていく力を持っています。私たち人間にできるのは、彼女たちが快適に暮らせる環境を整え、適切なタイミングで最小限の手助けをすること。

「何もしないが、見守る目は離さない」。この距離感を大切にしながら、皆さんの養蜂ライフが豊かなものになることを願っています。

みなさんのニホンミツバチ飼育が、実り多いものになることを願っています。

参考記事

ニホンミツバチ飼育全般について以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

参考文献

  1. 週末養蜂「飼育方法(夏前まで)」 — 入居直後の管理、重箱の追加について
  2. SAMURAI BEEKEEPERS(北信流養蜂会)「日本蜜蜂の逃去が相次いだ原因は?」 — https://ameblo.jp/123abc123123123/entry-12811314006.html
  3. 週末養蜂「スムシ対策|ニホンミツバチの巣を食べる蛾の幼虫の被害と予防法」 — https://syumatsu-yoho.com/post/sumushi
  4. 河津製材所「日本蜜蜂のスムシ対策」 — https://www.ogunisugi.jp/apicultureblog/mitsublog18.html
  5. ビー・セブン・プロダクツ「スムシっ子カードII」製品情報(週末養蜂家ショップ) — https://store.shopping.yahoo.co.jp/syumatsuyoho/sumushi-card-1.html
  6. 週末養蜂「アカリンダニ対策」 — メントール処置・京都府の寄生状況研究(京都先端科学大学 坂本文夫名誉教授)
  7. 週末養蜂「アカリンダニとは?ニホンミツバチへの被害と症状・検査・対策を解説」 — https://syumatsu-yoho.com/post/akarindani
  8. 坂本佳子・前田太郎・大島一正・五箇公一「ニホンミツバチに寄生するアカリンダニの分布調査と遺伝子解析」日本生態学会第62回全国大会講演要旨(ESJ62 PB2-216) — https://www.esj.ne.jp/meeting/abst/62/PB2-216.html
  9. savebeeproject「6. 対策」 — https://www.savebeeproject.net/woodi-menthol
  10. みつばちとマーヤ「メンソールの作り方〜アカリンダニ対策」 — https://ameblo.jp/beelove-tokyo/entry-12751152723.html
  11. みつばち果樹園「ニホンミツバチ用『重箱式巣箱』の作り方・DIY完全ガイド」 — https://risingdragonhoney.com/building-box-hive/
  12. 38qa.net「ニホンミツバチ重箱式巣箱の鉄製台を作り方について」 — https://38qa.net/118143
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この記事を書いた人

自然に囲まれた場所で、果樹を育てたり日本蜜蜂を飼ったりしながら暮らしています。
田舎の暮らしも不便さばかりではなく、便利な道具や家電を取り入れることで、快適さと楽しさの両立を目指しています。
このブログでは、養蜂や果樹栽培といった趣味の実体験に加えて、暮らしをちょっと便利にしてくれる道具の紹介や、将来に備えた気軽なマネーの工夫についても発信しています。
田舎でも都会でも、暮らしを「ちょっと楽しく、ちょっと賢く」するヒントをお届けできれば嬉しいです。

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