ニホンミツバチの夏の暑さ対策|巣落ちを防ぐ3つの柱

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7月の午後、巣箱の壁にびっしりと蜜蜂が張り付いて、巣門辺りでは羽音がゴーッと鳴っている——。そんな光景を見て「これ、まずいのかな?」と不安になったことはありませんか。

この「ヒゲ」とも呼ばれる状態は、暑いから涼みに出ているだけのように見えて、実は群れが出している立派なSOSサインです。

近年の猛暑は、従来の飼育セオリーが通用しないレベルになってきています。「日陰に置いてあるから大丈夫」「巣落ち防止棒を入れてあるから安心」。そう思っていた巣箱が、ある朝見に行ったら巣が丸ごと落ちていた、という報告も少なくありません。

この記事では、まず夏の最悪の事態である「巣落ち」がなぜ起きるのかを押さえた上で、ニホンミツバチの夏越しを遮光・通風・水場の3本柱で整理し、具体的な手順とともにお伝えします。あわせて、どうしても巣箱を動かしたい時の移設ルールや、暑さと同時にやってくる「夏枯れ」についても説明します。

目次

この記事でわかること

  • 猛暑が群れにどのような影響を及ぼすのか、そのSOSサインの読み方
  • 巣落ちはなぜ起きるのか、そしてなぜ巣落ち防止棒だけでは守れないのか
  • 遮光・通風・水場、3本柱それぞれの具体的な手順
  • 涼しい場所に巣箱を移設する時の「30cm/3kmルール」
  • 夏枯れとは何か、夏枯れにはどのような対応が考えられるか

猛暑とニホンミツバチ

高温が蜜蜂に及ぼす悪影響

夏の高温で巣内温度が上がり過ぎると、次の4つが起こると言われています。

  1. 育児障害 — ニホンミツバチは幼虫や蛹(さなぎ)がいる育児域を33〜36℃に保っているとされています(34〜35℃がベスト)。この温度帯を大きく外れると幼虫や蛹が正常に育たず、死んでしまった幼虫や蛹を巣の外に捨てる「子捨て」が見られます。
  2. 蜜蜂の消耗 — 扇風行動と給水に大量の働き蜂が動員され、採餌に回せる蜂が減って群勢が落ちます。
  3. 巣落ち — 蜜蝋が軟らかくなり、蜜の重みに耐えられなくなった巣板が落下します。
  4. 逃去(とうきょ) — 環境が耐えられないと判断した群れは巣を捨てます。特に暑さで巣が落ちると、かなりの確率で逃去すると言われています。

つまり暑さは、育児不全、群勢低下、巣落ち、逃去という複数の問題を引き起こすのが厄介なところです。

近年の猛暑でリスクは上がっている

温暖化の影響で、以前は経験することのなかった猛暑が続いています。気温が36℃を超える日はもう珍しくなくなってしまいました。地域によっては40℃に達することも起きています。「ここは昔から大丈夫だった」という飼育場所や飼育方法でも、見直しが必要になるケースが増えていると感じています。

群れが出す暑さのサイン

  • 扇風行動 — 巣門で蜜蜂がお尻を巣門方向に向けて羽ばたき、外気を巣内へ送り込む行動。近くに立つとゴーッという結構大きな羽音がします。ちなみに、セイヨウミツバチは頭を巣門方向に向けて扇風します。和洋で反対なのは面白いですね。
  • 巣門のヒゲ — 巣箱の外壁に蜜蜂がびっしり張り付く状態。定員オーバーか高温、あるいはその両方のサインです。涼みに出ているだけに見えますが、「中にいられない」という状態です。
  • 給水行動の急増 — 水場やエアコン室外機の排水に蜜蜂が押し寄せます。

扇風もヒゲも、蜜蜂がすでに限界近くまで頑張っている証拠ですから、できるだけサインが出る前に対応する方が良いでしょう。

そして、夏の暑さが引き起こす問題の中でも最悪の結果につながるのが巣落ちです。まずはそのメカニズムから見ていきます。

巣落ち——夏の最悪の事態を防ぐ

巣落ちはなぜ起きるか

巣落ちの要因としては、以下が挙げられると思います。

  1. 温度上昇と蜜蝋の軟化 — 巣板の材料である蜜蝋は、温度が上がると軟らかくなります。これが根本の原因です。
  2. 巣板の重さ — ハチミツがたっぷり溜まっていると巣板はかなりの重さになります。蜜蝋が軟らかくなって自重に耐えられなくなり、落ちるというわけです。
  3. 巣箱の内寸 — 内寸が大きいと巣板がくっついている壁までの距離が遠くなり、中央付近が支えきれずに巣落ちしやすくなります。内寸は22cm四方程度より大きくしないほうが無難です。
  4. 巣落ち防止棒が不十分 — 防止棒の数や設置位置が不適切だと、巣落ちが起きやすくなります。

軟らかくなった蜜蝋に、重い蜜。さらに巣箱の設計が良くないと、巣板は自分の重さで剥がれ落ちてしまうわけです。特に危険なのは採蜜直後です。重箱式では採蜜した後に巣落ちしやすいと言われています。理由は後述します。

落ちるとどうなるか

  • 高確率で逃去 — 蜜が流れ出るような大規模な巣落ちだと、運が良かったとしても群れは逃去して空っぽになります
  • 女王の圧死 — 落ちた巣板の下敷きになる可能性があります
  • 巣門閉塞による全滅 — 落ちた巣板が巣門を塞ぎ、内部がサウナ状態になって群れごと全滅する最悪のパターンです

巣落ち防止棒は万能ではない

巣落ち防止棒を入れてあるから大丈夫と思いがちですが、細い針金でも太い木の棒でも巣落ちは発生します。防止棒はあくまで「支え」であって、蜜蝋が軟らかくなる根本の原因を止めてくれるわけではありません。

それから、防止棒の入れ方にも注意点があります。従来は各段に十字に入れることが多かったのですが、ニホンミツバチは巣板を必ずしも巣箱と平行には作りません。斜めに作られた場合、端の巣板が防止棒に全くかからないことがあり、その巣板は落下リスクが高いままです。そこで近年は、十字ではなく格子状(井桁組み)に入れたほうが安心という意見が増えているように感じています。

私もほとんどの巣箱の巣落ち防止棒は十字で入っています。でも最近は、以下のビニル被覆の針金を使って井桁にしています。また、すでに十字で入れてある巣箱にも、後から追加するようにしています。

採蜜と巣落ち

蜜がたっぷり溜まった巣板の重さは、巣落ちの直接原因の一つです。

越冬した群れであれば、初夏(6月頃)に最上段だけ採蜜して重量を減らしておく。これが真夏の巣落ちリスクを下げる、地味だけれど効果的な方法です。

一方、真夏の採蜜は避けた方が良いでしょう。理由は2つあります。

理由1:スノコと巣の接着を切ることになる。重箱式では最上段の巣板は天板やスノコに固定されています。採蜜でこれを切り離すと、2段目以降は壁面の接着だけで支えられることになります。高温で蜜蝋が軟らかい時期にこれをやると支持力が足りずに落下する。「最上段を切り離した後、2段目の巣板が柔らかくて固定が間に合わず巣落ちした」ということは十分あり得ます。

理由2:そもそも採る蜜がないことも多い。春に入居した群れはまだ巣が十分に成長していません。無理に採ると育児圏や花粉層まで切ってしまいます。また、越冬群も初夏に採蜜しておけば、夏はまだ採蜜するほど蜜が溜まっていないことが多いでしょう。

ここまでをまとめると、巣落ちを防ぐには、防止棒に頼るのではなく「蜜蝋を軟らかくしない」「巣を重くしすぎない」「巣箱の設計をよく考える」という根本のところを押さえておく必要がある、ということになります。そして、この原因に一つずつ対応していくのが、これからお話しする3本柱です。

対策の全体像「遮光・通風・水場」

対策目的主な手段
①遮光日光で巣内温度が上昇することを抑える遮光に加えて、断熱や継箱も併用
②通風高温になった巣箱内の空気が外気と入れ替わりやすくする四面巣門、アオヤギ式巣門台など
③水場をつくる蜜蜂自身による気化冷却を助ける給水スポット設置・維持

では、順番に見ていきましょう。

① 遮光がすべての土台

まず直射日光を遮る——巣箱を動かさず環境を変える

最優先は直射日光を遮ることです。直射日光が当たると外壁が高温になり、その熱が壁を通して内部へ伝わります。特に厄介なのが、巣板が壁に接している部分です。ここが高温になると、巣板が壁側に接着している重要部分が柔らかくなって巣落ちにつながります。

「じゃあ日陰に巣箱を動かせばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、蜜蜂は巣の位置を正確に記憶しているため、安易に移動させると帰巣できない蜜蜂が大量に出てしまうんです。どうしても移動が必要な場合は、後述の30cm/3kmルールを参考にして下さい。

まずは、巣箱を動かすのではなく、巣箱の周りに「日陰を作る」ことを重視すると良いと思います。

遮光ネット・すだれ・緑のカーテン

手段特徴向いている場面
遮光ネット(寒冷紗)耐久性が高い。遮光率を選べる設置が少し手間だが広めに日陰にできる
すだれ安価。通気性が良い手軽に始めたい
緑のカーテン・落葉樹夏は日陰、冬は落葉理想的

遮光ネットやすだれは園芸用品店・ホームセンターで手軽に入手できます。巣箱の段数に合わせて長さや大きさが違うものを1本用意しておくと、継箱で背が高くなった時にも使い回せて便利です。

私自身は、できるだけ落葉樹の下に設置するようにして、それが難しい場所は、遮光ネットを巣箱上に張るか、100円ショップで購入できるすだれを巣箱に付けています。

午後の西日には特に要注意です

遮光を考える時に特に注意が必要なのが西日です。午前中は木陰でも、15時頃になると横から容赦なく日が差し込むケースは意外に多いです。午後の一番気温が高い時間帯に、西日が追い打ちをかけてダブルで効いてきてしまいます。

  1. 午後に太陽光が当たっていないか確認 — 遮光したつもりが、意外と西日が当たってしまっていることがあります。上から覆うだけではなく、西面には縦方向に垂らす遮光材があった方が良いでしょう。
  2. 西側だけ追加で遮光する — 例えば上側を寒冷紗で覆っていても、西側面だけはすだれを長く垂らしたり、ベニヤの日除け板を追加するといった対応が有効です。

遮光物は確実に固定しましょう

見落とされがちなのが固定です。最近は台風も予想外の進路を通ることがあるので、台風が来てから対策ではなくて、常時固定しておくほうが無難です。遮光材が風で飛ばされると近隣に迷惑をかける可能性もあるので、ここは手を抜かないほうが安心です。

  • すだれは元の位置をネジでしっかり固定する
  • 日除け板は木ネジで留める(間に角材を挟んで風の通り道を作る)
  • 台風が来る時には再度固定を確認

巣箱側の断熱

側面にベニヤ板や発泡スチロール板を貼る

各段の高さに合わせたベニヤ板などを、木の棒(角材)を挟んで取り付けます。板と巣箱の間に空気層ができ、断熱層としても働きます。表面を焼いた焼き杉の巣箱は黒くて熱を持ちやすいので、白色の発泡スチロール板は特に効果があると思います。

屋根の保護

巣箱の上はそのままにせず、屋根を設けます。雨よけと遮光の2つの目的です。

簡単な方法としては、断熱材(発泡スチロール板など)を置き、その上にポリカーボネートの波板を置いて荷締めバンドなどで固定するだけでも十分です。また、できれば屋根を購入するか、製作するとベターです。私は中空ポリカーボネートを使った屋根を知り合いの大工さんに作ってもらって愛用しています。

板厚は厚いほうが有利

伝わる熱の量は板厚に反比例しますので、巣箱の板厚は厚いほうが良いと考えています。板厚35mm程度あれば外からの熱が伝わるのに時間がかかりますが、例えば17mmだと巣箱内に早く熱が伝わってしまいます。加えて厚板はスムシやオオスズメバチに食い破られにくく、反りも出にくいです。最低でも24〜25mm、できれば35mm程度をお勧めします。

35mm程度の厚い巣箱を自分で製作する場合は、杉の足場板(厚さ35mm前後)が入手しやすくコストも抑えられます。こちらの記事を参考にして下さい。

② 通風を確保する

四面巣門

四面巣門は、巣箱の最下部に隙間をつくり四方向どこからでも出入りできるようにした構造です。風が通り抜けやすく、巣くずも溜まりにくいのでスムシ(ハチノスツヅリガの幼虫)対策にもなります。

週末養蜂さんの鉄製台が有名ですね。もっと簡単には、最下段の四隅に6mm程度の板を挟むだけでも実現できます。

ただし注意点が2つあります。

  • 待ち箱(分蜂群捕獲用の巣箱)としては不向きで、入居率が落ちると言われています。
  • 入居直後の群れをすぐ四面巣門にすると逃去のリスクがあります。私も入居当日の夜に四面巣門に変えてしまって直ぐに逃げられた経験があり、それ以来は入居後1週間ほど待ってから交換するようにしています。

アオヤギ式巣門台

アオヤギ式巣門台は、巣箱下を大きく開放し、落ちたスムシが這い上がれない構造にしたものです。開口部が広く、自然な空気の対流が期待できます。

実際に改良アオヤギ式に変えたところ、巣箱の壁に蜜蜂が張り付くヒゲが全く無くなりました。以前は真夏の昼間、巣門の外で一生懸命扇風していましたが、現在は内側でたまに扇風している音が聞こえる程度で、頻度もかなり減りました。暑さ対策として非常に有効と考えています。

以下の記事でアオヤギ式巣門台とその改良版を詳しく説明していますので参考にして下さい。

上部通風の是非

暖かくなった空気は上に昇ります。底面通風だけでは足りないと感じた時、「天板に通気口を設けて、上に溜まった暖かい空気を抜けばいいのでは」と誰しも考えると思います。

ただし、上部の通気口の是非は意見が分かれるところです。

肯定派 — 天板に開口部を設けて金網を張る、天板と蓋の間に数ミリの隙間を作る方法です。暖かい空気は上に昇るのだから排気口を作るのが理にかなっている、という考え方。実際に「換気口の効果は抜群で、あれだけ外に張り付いていた蜜蜂が今日は皆無」という報告もあるようです。

否定派 — 次のような懸念が挙げられています。

  • 通気口から巣の匂いが漏れ、帰巣した蜜蜂がそこから入れると勘違いする
  • 夜や雨などで気温が下がったとき暖かい空気が逃げる。底だけ開いていれば蜜蜂は必要に応じて熱を溜められる
  • スムシ・スズメバチ・アリの誘引リスクが増える
  • アカリンダニ対策に使うメントールの揮発成分が隙間から逃げる(ただし、メントールは40℃程度で液化し、液化すると逃去の原因になりますので、真夏には使用しない方が良い)

実際、私も2025年の夏に天板と巣箱の間に園芸用のネームプレートを挟んで少しだけ隙間を設けてみましたが、その隙間からスムシが侵入して、夏分蜂群の巣箱内がスムシだらけになってしまったことがあります。

実際の温度を測定する必要性

まず遮光と底面通気を徹底し、それでも足りない場合の追加手段として上部通気が必要か慎重に検討する、という順序が無難でしょう。もし試すのであれば、巣箱内と巣箱外の温度を同時に測定できる温度計を使って、有効性を事前に確認することをお勧めします。

  • 上部に隙間を設けた巣箱と設けていない巣箱の2つの内外温度を測定し、昼間の高温時に隙間を設けたほうが温度上昇を抑えられているか
  • 夜間に巣箱内の温度が必要以上に下がっていないか

実は「ちゃんと遮光した場合、上部に隙間を設けなくても意外と内外温度差はなかった」という話も聞いたことがあります。様々なデメリットも考えると、上部に通気口を設ける意味が本当にあるのか、一度内外温度を確認しておく意義はあるかと思います。

継箱で蜂がばらける空間をつくる

見落とされがちですが、継箱(つぎばこ)は立派な暑さ対策です。巣箱内が満杯だと蜜蜂の密度が高くなって熱がたまり、蜂は外へ出てヒゲを作るしかなくなります。逆に巣箱内に余裕があれば、蜜蜂は内部で分散できるというわけです。

タイミングは「巣の下端が最下段に入ってきた頃」が一つの目安と考えています。すなわち、一番下の段まで巣がいっぱいにならないようにするということです。ただし、空間に余裕がありすぎると巣の片伸びを誘発してしまい、かえって巣落ちしやすくなるという意見もあります。飼育者によって意見が分かれるところですので、詳しくは以下の記事のSTEP7をご覧ください。

③ 水場をつくる——気化冷却の主役は蜂自身

そもそも必要か——周囲の自然水源をまず確認

水場は必ずしも必要ではありません。周囲に川や水路がある環境なら、蜜蜂は自分で水源を見つけます。

一方で設置を検討すべきケースもあります。

  • 周囲に清潔な水源がない
  • 田んぼが近く、農薬散布の時期に汚染水を飲む恐れがある

農薬被害の観点は重要ですね。安全な水を近くに用意しておくことは農薬リスクの低減にもつながると考えています。

蜂が水を使う3つの理由

① 気化冷却(打ち水行動) — 暑さ対策の主役です。蜜蜂は水を集めて巣に持ち帰り、巣内に吐き出して羽ばたきます。気化熱で巣内温度を下げる、いわば天然のエアコンです。暑さ対策の主体は蜜蜂自身であり、私たちにできるのはその環境を整えることとも言えます。

② 水分補給 — 貯蔵した蜂蜜を食べる際、水で薄める必要があります。

③ ミネラル摂取 — 純水よりわずかにミネラルを含んだ水を好む傾向があるようです。エアコン室外機のドレン水、コンクリートの染み出しなどに集まるという観察が複数報告されています。

これは実は私も実感しています。夏場に世話をしていると、蜜蜂が私の腕に止まって、汗が半分乾いたところを舐めていくのです。最初はドキッとしましたが、慌てて払いのけたりしなければ刺されることはまずありません。塩分やミネラルを求めていたのだと思いますが、まるで懐いているように感じて可愛く思えてきますね。

設置の要点

① 溺死対策が最優先

ただ水を張った容器を置くと蜜蜂は普通に溺れますので、足場を必ず用意します。

素材特徴
溶岩石・小石石の隙間から安全に給水できる。定番。
水苔・ハイゴケ蜜蜂が特に好む。岩肌の苔から染み出る水が大好きなようです。
浮き草(ホテイアオイ等)足場になり、水質浄化も期待できる。
人工芝鉢受け皿に敷くだけで手軽です。
スポンジ・排水口ネット100均で入手可。溺死をかなり防げる。

② 場所・距離・日陰

巣箱のすぐ近くである必要はありません。数メートル〜数十メートル離れた場所にも来ます。日陰を選び、複数箇所に置くとベストかと思います。

③ 水質は水道水で十分

カルキは直ぐに蒸発するので気にする必要はありません。

それでも暑い時の最終手段:移設「30cm/3kmルール」

遮光・通風・水場の3本柱を全部やっても、どうもまだ暑すぎるようだと感じて、巣箱を移動したくなることもあるかと思います。本来は飼育場所を選ぶ段階で検討すべきことですが、近年の猛暑は想定以上です。

移設は最後の手段としてできるだけ避けたほうが良いのですが、実施される方のために注意点をまとめておきます。

まず、蜜蜂は巣の位置を周囲の風景と方角で記憶しています。1メートル動かしただけでも外勤蜂は巣箱の元の位置に戻ってきて宙を舞うことになります。一方、3km以上離れた場所に移せば周囲の風景が完全に変わるため、蜜蜂は「新しい場所だ」と認識して位置を再学習します。

迷い蜂を出さずに巣箱を移設する方法は、以下のいずれかになります。

  • 方法A:1日30cmずつ動かす — 毎日少しずつ動かして、位置の変化を都度学習させます。
  • 方法B:3km以上離れた涼しい飼育場所へ移設する。または、3km以上離れた場所へ一旦移設し、1ヶ月程度経ってから元の場所の近くの涼しい場所に戻す方法もあります。

実は私も、暑さとは別の理由で巣箱を8mほど動かす必要に迫られたことがあります。選んだのは方法A、少しずつずらしていくやり方でした。蜂友さんと協力して巣箱を少しずつ動かして、結局2週間ほどかけて8mの移動を終えました。1日30cmを厳密に守ったわけではありませんが、蜜蜂たちは大きく混乱することなくついてきてくれました。

なお、3km以上動かす場合の注意点です。猛暑期に車で運ぶと、振動と熱で巣落ちを誘発するリスクがあります。暑くなってからではなく、梅雨明けまでに移設を済ませておくのが安全です。

夏枯れ——暑さと重なるもう一つの負荷

7〜8月は蜜源の端境期

真夏には、暑さと同時にもう一つの問題が重なります。「夏枯れ」、すなわち蜜源の枯渇期です。

地域によってかなり異なりますが、7月から8月は花が咲く蜜源が少なく、暑い上に蜜を集めるのにも苦労する。群れにとってはダブルパンチです。

蜜源を植える——数年後の夏に効く根本対策

本来的な対策は、夏の蜜枯れ時期に開花する植物を植えることだと思います。以下のような蜜源植物が知られています。

樹種特徴注意点
カラスザンショウ夏蜜源の代表格樹高が出る。棘がある
ビービーツリー訪花が非常に多いと評判20m級の高木。開花まで数年
セイヨウニンジンボク7〜9月と花期が長い低木比較的小型で扱いやすい
ヌルデ落葉高木。夏蜜源かぶれる体質の人は注意
サルスベリ花期が長い。主に花粉源庭木としても人気

これらの植物は通常の園芸店では販売していないことも多いので、オークションサイトなども探してみると良いと思います。数年後の夏に効いてくる、根本対策です。

給餌は対症療法

目の前の夏枯れに対しては給餌という選択肢がありますが、これは対症療法です。賛成派と不要派に分かれます。

やるなら少量・夜間・巣門狭め

  • 少量多回数。100ml以内を目安に、夜入れて朝取り出す
  • 給餌場所はスノコ上が無難
  • 巣門を狭める — 給餌中は防衛力を高める

最大のリスクは盗蜜です — 夏枯れ期は他の群れも必死に蜜源を探しています。セイヨウミツバチの盗蜂が来れば群れが消滅する確率も高いので、夏の給餌はリスクを理解した上で最小限にというのが安全側の判断でしょう。

蜂蜜を給餌に使うより砂糖水のほうが病気の面で安全とされています。また、自作の転化糖については加熱により蜜蜂に有害なHMFが生成されてしまいます。詳しくは以下の記事をご参照下さい。

作業者自身の熱中症対策

夏場は蜜蜂以上に自分が心配

実は私、それほど暑くない夏の午前中、防護服を着て30分ほど継箱の作業をしていたら軽い熱中症になってしまったことがありました。

面布や防護服は通気性が悪く、炎天下で着込めば体温は急上昇します。基本は早朝か夕方の作業。暑い日は無理せず休む判断が大事ですね。

今後は空調服も試してみたいと思っています。ファンで服の中に風を送り込むだけで体感温度は大きく下がります。ファンに蜜蜂が吸い込まれないような工夫をしようかと思っています。

まとめ

ニホンミツバチの重箱式飼育は自然任せ・蜜蜂任せの部分が大きく、人間にできることには限界があります。それでも、遮光1枚、継箱1段、水場ひとつで結果が変わることは確かにあります。

この記事の内容を5つに整理します。

  1. サインを読む。扇風とヒゲは、蜜蜂が限界近くまで頑張っている証拠。サインが出る前に手を打ちましょう。
  2. 巣落ちは従来の防止棒だけでは防げない。井桁に入れる、初夏に最上段だけ採蜜して軽くする、真夏の採蜜は避ける。この3点です。
  3. 遮光がすべての土台。特に西日は要注意。板厚や屋根で巣箱側の断熱も。
  4. 通風は四面巣門やアオヤギ式で底面から。上部通気口は、温度を測ってから慎重に判断。
  5. 水場は蜜蜂自身の気化冷却を助けるもの。溺死対策を最優先に。

近年の猛暑は「今まで大丈夫だったから」が通用しなくなってきています。サインが出てから動くのでは遅い。夏が来る前、遅くとも6月のうちに手を打っておく——これが、この記事で一番お伝えしたかったことです。

そして忘れないでいただきたいのが、ご自身の身体のこと。無理をせず、涼しい時間に、少しずつ。それが長く趣味を続けるコツだと思います。

参考記事

巣箱製作がまだの方はこちらを御覧下さい。高断熱仕様の巣箱を作れます。

暑さに効くアオヤギ式巣門台について詳しく知りたい方はこちら。

改良アオヤギ式巣門台の作り方はこちら。

継箱についてはこちらの記事をご参照下さい。

ニホンミツバチ飼育全般について以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

参考:YouTube動画

私がニホンミツバチを飼育している様子をYouTube動画にしていますので、良かったらご訪問いただければと思います。

YouTubeチャンネルはこちらです。

南箱根の田舎暮らし – はちみつ果樹園だより

本記事の内容を分かりやすく解説するYouTube動画も作成予定です。

終わりに

ここまで読んでくださりありがとうございました。この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

それでは、楽しい養蜂ライフを!

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この記事を書いた人

自然に囲まれた場所で、果樹を育てたり日本蜜蜂を飼ったりしながら暮らしています。
田舎の暮らしも不便さばかりではなく、便利な道具や家電を取り入れることで、快適さと楽しさの両立を目指しています。
このブログでは、養蜂や果樹栽培といった趣味の実体験に加えて、暮らしをちょっと便利にしてくれる道具の紹介や、将来に備えた気軽なマネーの工夫についても発信しています。
田舎でも都会でも、暮らしを「ちょっと楽しく、ちょっと賢く」するヒントをお届けできれば嬉しいです。

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