ニホンミツバチ強制捕獲の全手順|初心者でもできる道具・コツ・注意点

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強制捕獲をしているところ

自分の飼育群から分蜂(ぶんぽう)が出て、近くの木に蜂球(ほうきゅう)を作っている——そんな光景を見つけたとき、みなさんはどうしていますか?

「矯正捕獲というやり方を聞いたことがあるけど、やったことがないのでどうしたらよいか分からない」「失敗して逃げられないか不安…」と、ためらってしまう初心者の方も多いのではないでしょうか。

いくつかの準備や捕獲方法を理解しておけば、見つけた蜂球をほぼ確実に巣箱に収められますので、群れを安定的に増やしていく上でぜひ押さえておきたい技術です。

この記事では、初心者の方から中級者の方まで参考になるように、道具選び・捕獲のやり方・定着・注意点などを丁寧に解説していきます。

読み終えるころには、ニホンミツバチの「強制捕獲」がぐっとクリアになっているはずです。

目次

強制捕獲とは — 待ち箱への自然入居と何が違う?

まず、ニホンミツバチの分蜂や蜂球についてはこちらの記事の冒頭の【基礎知識】で解説していますので、まだご覧になっていない方は基礎知識としてご一読ください。

強制捕獲とは

強制捕獲とは、分蜂で飛び出して木の枝などに集合した蜂球を、人間が網などを使って強制的に取り込み、新しい巣箱に収容する方法です。これに対して自然入居は、空の待ち箱を設置しておき、分蜂群が自分の意思でその巣箱を選んで引っ越してきてくれるのを待つ方法です。

まずは、以下の自然入居と強制捕獲の比較表で、それぞれ特徴の全体像を押さえておきましょう。

自然入居と強制捕獲の比較表

比較軸待ち箱への自然入居蜂球の強制捕獲
難易度
(入居率は高く無い)

(捕獲方法に習熟が必要)
必要な技術巣箱・誘引剤の準備捕獲と巣箱への誘導方法
蜂への負担最小(蜂が自分で選ぶ)
定着率高いやや低い(逃去リスクあり)
飼育群の必要性不要原則、必要
(稀に蜂球を偶然見つけることもある)
時間の自由度不要(自然入居に任せる)蜂球発見時に対応が必要

このように、自然入居は準備などで時間的余裕があり、また、最もミツバチに優しく定着率も高いですが、入居確率はあまり高くありません。

一方、強制捕獲は「飼育群から出た分蜂を確実に手元に残せる」という大きな強みがあります

ニホンミツバチ飼育は最初の1群を捕まえるのが大変だが、飼育している人が強制捕獲で群数を増やしていくのは比較的容易と言われています。すでに飼育群を持っている方にとっては飼育群を増やすための必須のスキルと言えるでしょう。

強制捕獲のメリット・デメリット

メリットは、なんといっても見つければほぼ確実に捕獲できる点です。自然入居が「来てくれるかどうか分からない」のに対し、強制捕獲は能動的に群れを確保できます。

一方デメリットは、自然入居に比べて逃去(とうきょ)リスクが高いこと。これは私自身も痛感したところで、後ほど体験談として詳しくお話しします。ミツバチが「自分で選んだ家ではない」と感じている以上、人間側が定着のための工夫をする必要があるのです。

強制捕獲が選択肢になるシーン

自宅・敷地内の分蜂群を逃したくないとき

自分が飼育している群れから分蜂が出ると、多くの場合、元巣から数百メートル以内の樹木や構造物に蜂球を作ります。ニホンミツバチは元の巣から10メートル以内の場所に再入居することも珍しくありません。せっかく自分の敷地で分蜂したのに、ぼーっと見ているだけでは別の場所へ飛び去ってしまうこともあります。

「目の前で消えていくのを見送る」のはあまりにもったいないですよね。集合板や待ち箱、強制捕獲の準備をしておけば、これを群れ数の増加につなげられます。

知人・近隣から「蜂が集まっている」と連絡が来たとき

養蜂をしていると、知り合いから「庭に蜂が固まってる!」と連絡が来ることが意外とあります。納屋の屋根裏や庭木の枝に蜂球ができていて、住人がびっくりというケースも多いのです。

こんなときに駆けつけて捕獲できるよう、車に基本的な道具一式を常備しておく方もいます。連絡を受けて到着するまでに飛び去ってしまうこともあるため、知人にも「見つけたら捕獲に行くから教えてね」とお願いしておくと、捕獲のチャンスがぐっと広がります。

分蜂シーズンに積極的に群数を増やしたいとき

健康な飼育群は1シーズンに3〜4回分蜂することもあります。これを全て捕獲できれば、1群が4群、5群と一気に増やせる計算です。「今年は群数を増やしたい」という年には、強制捕獲は最も効率的な手段になります。

必要な道具一覧

捕獲用具 — 網は「ある程度の長さ」があると扱いやすい

捕獲の主役は捕獲網です。市販の昆虫採集用の網でも代用することも考えられますが、深さが足りないと蜂球が中で潰れたり、フチからこぼれたりします。

私は野菜収穫用のネットに被覆針金を通して網にしたものを使っています。縦の長さが十分にあるので蜂球を確実に収納でき、女王が中に入ってしまえばまず逃げません。ただし網が長い分、重箱の上に渡して取り込みに移行する際には長めの台や花台が必要になります。これは長い網の欠点ではありますが、あらかじめ準備しておけば問題無いです。

在野の研究者、久志冨士男さんは、以下の著作で針金ハンガーを丸く広げてビニール袋をガムテープで取り付けた即席の網を、竹竿に固定して使うことでも捕獲できると紹介しています。緊急の場合は、手元の道具で何とかできるのもニホンミツバチ養蜂の楽しいところです。

安全装備 — 防護服・手袋

分蜂群はお腹いっぱいに蜜を持っており、攻撃性は普段より低いと言われています。素手で作業する方もいますが、防護服・手袋を必ず着用しましょう。慌てて作業するとミツバチを潰してしまい、その匂いで仲間が攻撃的になることもあります。

防護服は本格的なものでなくても十分実用になります。これから始める方は、入門用の養蜂着セットを1着用意しておくと安心です。

受け入れ巣箱(重箱式の準備ポイント)

捕獲したミツバチを収める受け入れ巣箱は、事前にしっかり準備しておきましょう。基本は重箱式の巣箱で、蓋とスノコ付きの最上段+二段目+巣門+底板を組み合わせたものを用意します。

重箱式巣箱の作り方は以下の記事をご参照ください。

補助道具

意外と忘れがちですが、以下の補助道具があると作業がぐっとスムーズになります。

  • 脚立:高い位置の蜂球を捕獲する場合
  • 刷毛(柔らかいもの):巣箱に落とし込む方法で捕獲する場合
  • 針金・ガムテープ:網の口を素早く閉じるために
  • 6〜7mmほどの小さめの板:巣箱に蜂を入れる際、巣箱の下に挟んで巣門部分を確保するのに便利
  • 花台:網を設置して、上に巣箱を置いて蜜蜂に巣箱へ移ってもらう。網の長さと同じくらいの高さがあると良い。

特に脚立は、安全面でも作業効率の面でも、しっかりしたものを1台用意することをお勧めします。4つ脚がある家庭用の脚立は地面が完全に平らで無いと安定しませんので、安全のため農作業でよく使われている三脚を用意しましょう。

オールアルミ製の三脚は屋外に置いても錆びないのでお勧めです。

網を使った一般的な捕獲方法

ここでは蜂球を網で捕獲して、巣箱に誘導する一般的な方法を解説します。

分蜂の把握

春になってお住まいの地域の分蜂時期が近づいたら、自群から分蜂が起きないか注意しておきます。一般には雄蜂の蓋が落ちてから10日から20日くらいで第一分蜂が起きると言われています。

分蜂は晴れた風の無い暖かい日の午前中(10:00-11:30くらい)に起きることが多いですが、曇りの日や稀には雨の日でも分蜂は起きますし、午後や夕方に分蜂が起きることもあります。

分蜂の起きそうな日に飼育場所にいて分蜂したら直ぐにどこに蜂球を作るかを確認することが強制捕獲ができる前提条件になります。

私は不在の時に気になって仕方がないので、以下の監視カメラを使って、蜜蜂が分蜂したり探索蜂が来たりしていないかをスマホで時々確認しています(笑)。

SwitchBotは監視カメラ以外にも様々なスマート家電などを販売していて便利です。

分蜂と蜂球形成の確認

分蜂が始まったらどこに蜂球を作るかを見定めます。

蜂球を作る場所が大体分かったら、蜂球のすぐ下で作業できるように、受け入れ巣箱、捕獲網(できれば2つ)、針金などを準備します。高い場所の場合は脚立も用意し、蜂球が落ち着くまでには防護服を着るようにします。

捕獲と巣箱への誘導

蜂球の表面が落ち着いて、広がっていた蜂球が釣鐘型になるのを待ちます。

網を蜂球の下から優しく上にすくい上げ、蜂球が網の中に落ち込んだら素早く針金で口を縛ります。そして、針金で口を絞ったまま、花台に設置して、上から巣箱を置き、針金を外して口を開きます。

蜜蜂は上に登っていく修正がありますので、徐々に巣箱に入っていきます。

野菜収穫ネット+花台+巣箱

この花台を使用していますが、ネットの口の直径と花台の上の部分の直径がほぼピッタリで便利に使用しています。

巣箱内への収納の仕上げ

ほとんどの蜜蜂が巣箱内に入ったら巣箱を底板の上に置き、7mmくらいの板を挟んで隙間を作ります。

女王が中に入っていれば、数分以内に巣門付近で扇風(せんぷう)行動が始まります。お尻を上げて羽を扇ぐ動作で、集合フェロモンを放出して仲間を呼んでいるサインです。

まだ巣箱に入っていない蜜蜂もこれで場所を見つけて巣箱内に入っていきます。順調に巣箱に吸い込まれていく場合は女王は最初の網の中にいます。

逆に扇風行動も起きず、蜜蜂が出てきて元の場所に戻って蜂球を作ってしまう場合は、女王を取り損ねている可能性があります。元の場所にできた蜂球内に女王蜂がいると思われますので、同様の手順で再度蜂球の取り込みを行います。

蜂球の形状変化と取り込みのベストタイミングについて

蜂球は時間とともに形が変わります。最初の数十分はミツバチが忙しなく動き回っていますが、落ち着くとほとんどが上を向き、表面が静かになります。これが取り込みの最適タイミングです。

ただし、落ち着いてから30分以上放置すると、新しい巣の場所を探す探索蜂が次々と飛び出していきます。「落ち着いて10〜20分以内」を目安にすると良いでしょう。

蜂球が落ち着いているか必ず観察します。表面がざわついている場合は特に注意が必要です。新しい行先を見つけて数分以内に飛び立つ可能性があります。

蜂球を見つけたら捕獲用の網はすぐ取り出せる位置に置いておくことを強くお勧めします。これは私の苦い経験からの教訓です。

飼育場所への移設(捕獲当日限定)

夕方から夜になって蜜蜂が全て巣箱内に戻ってきたら実際に飼育する場所に移します。強制捕獲の際には必ずしも飼育に良い場所に巣箱を置いて取り込めるとは限りません。

捕獲当日の夜ならばまだ蜜蜂は位置を覚えていませんから、好きな場所に移設することができます。蜜蜂が定着すると思われる場所に移設しましょう。具体的にどのような場所が良いかは以下でも説明しますが、自然入居を狙う場合の待ち箱の置き場所と同じです。

翌日以降は蜜蜂が巣の場所を覚えてしまいますから、たとえ数メートル動かしただけでも迷い蜂が出てしまいます。

分蜂集合板を使った計画的捕獲

分蜂集合板とは — 仕組み

分蜂集合板は、分蜂群が集まりやすいように作った板で、飼育中の巣箱の周囲に設置しておきます。狙い通りにここへ集合してくれれば、捕獲は劇的に楽になります。

ニホンミツバチは樹木の太い枝の付け根のような場所に蜂球を作る習性があり、毎年同じ場所に集まることも珍しくありません。集合板はこの習性を利用し、「集まりやすい形状の板」を人為的に用意して、捕獲しやすい位置に誘導するという発想です。

分蜂集合板を使うメリット

メリットは、作業位置が低くて捕獲しやすく、脚立などを使わないので安全であること。

デメリットは特には無いと思いますが、必ず集合板に集まってくれるとは限らないこと、特に周囲に高い木が多い環境では別の場所に集まってしまうことが多いので常にうまく行くとは限りません。

それでも「設置していれば確率が上がる」のは確かなので、飼育群がある方には強くお勧めします。

分蜂集合板の構造と素材

集合板の基本構造はシンプルです。板の表面に金網や粗い布を貼り、ミツバチが足を引っかけて集合しやすいようにします。表面は広葉樹の皮が良いとも言われますが、数千匹のミツバチが安定的に集合できる凹凸があれば素材自体はそれほど重要ではない、というのが実務的な見解です。

サイズは45cm四方程度あれば十分とされていますが、もっと小さくても機能します。耐久性は春の数ヶ月だけ持てば良いので、ベニヤ板やコンパネで作って大丈夫です。

私の自作体験 — コンパネ30cm×30cm+寒冷紗

私は集合板を自作してみました。コンパネ板を30cm×30cmに切り、表面に寒冷紗(かんれいしゃ:農業用の遮光ネット)を貼り付けただけのシンプルなものです。

これを近くの木にぶら下げておいたところ、高確率でそこに蜂球を作ってくれました

「45cm四方が目安」という解説もありますが、30cm角でも十分機能しました。形より「集まりやすい凹凸のある黒い面が、目立ちやすい場所ある」ことの方が重要なのかもしれません。

寒冷紗は安価で手に入れやすく、足を引っかけるのにちょうどいい目の細かさで、実績面からもおすすめできる素材です。

設置場所・高さ・向きの基本

集合板の設置で最も大切なのは、元の巣箱から10メートル以内に置くことです。分蜂群はそれ以上遠くまで飛んでから集合することは少なく、これを外すと効果が大幅に下がります。

設置角度は水平より若干傾けるのが最適とされています。蜂球がぶら下がる形になるよう、板の下面に集まれる構造を意識してください。高さは、捕獲作業のしやすさを考えて2メートル前後に設定するのが現実的です。高い方が蜜蜂に選ばれやすいと考えがちですが、2メートルくらいの高さでも蜂球を作ることは多いですし、また、高すぎると脚立が必須になります。

設置時期は分蜂開始の前に

集合板は分蜂シーズン前、遅くとも分蜂開始の1〜2週間前には設置を済ませておきたいところです。地域の分蜂開始時期は、九州南部で3月上旬、関東で3月下旬、東北で4月中旬から下旬が目安となります。

分蜂は1ヶ月ほどの間に7〜8割が集中するので、設置が遅れると致命的です。冬の間に作っておき、2月末〜3月上旬には設置しておくと良いでしょう。

蜂球形成後の捕獲手順

集合板に蜂球ができた後に巣箱に入れるにはいくつかの方法があります。

一旦網で捕獲して巣箱に誘導する

分蜂集合板は取り外さないでそのままとし、網で捕獲します。通常の網で捕獲するのと同じ手順となります。網から巣箱への誘導方法は上記のとおりです。

巣箱の上から刷毛などで巣箱内に落とし込む

台の上に置いたり巣箱を何段も重ねて、巣箱を分蜂集合板の近く(蜂球のすぐ下)に配置します。一番上の2段は待箱を上下逆さまにしておきます。2つの刷毛を使って蜂球を一気に巣箱内に落とし込み、蓋をして、上下をひっくり返します。蜜蜂が上の方に移動した頃合いをみて、板を挟んで巣門を開け、残った蜜蜂が巣箱に入ることを確認します。

巣箱を蜂球の直ぐ下まで持っていく必要があるのが少し大変です。また、蜜蜂を少し乱暴に扱いますので、その後の逃去が少し心配ですが、この方法で問題なく強制捕獲されている方もいらっしゃるようです。

集合板を木から外し、そのまま逆さにした巣箱の上に載せ、巣箱をひっくり返す

蜂球が小さくて直径が巣箱の内寸よりも小さい場合には、集合版を外し、上下逆さまに置いた2段の巣箱に載せます。そして、上下をひっくり返して、蜜蜂が上の方に移動した頃合いをみて板を挟んで巣門を開けます。

大きな蜂球でも取り込めるように、集合板の下に巣箱を取り付ける方もいらっしゃるようです。確かによほど大きな群れでも巣箱1段に収まりますし、上下逆さまに置いた2段の巣箱の上にスライドして乗せられるので蜜蜂を潰すリスクが低いです。私も一度やってみようかと思います。

プロの技:分蜂集合ボックスを使った蜂球ごとまるっといただきます作戦

通常の分蜂集合板の下に通常の巣箱(巣落ち防止棒無し)を取り付けた分蜂集合ボックスを使用されている方もいらっしゃるようです。

ほとんどの大きさの分蜂群は巣箱1段の中に収まりますので、この分蜂集合ボックス内に蜂球を作って貰えば、そのまま労せず捕まえることができます。

ただし、分蜂集合ボックスの天井は寒冷紗などの黒くて蜜蜂が捕まりやすい素材にしますので、そのまま飼育巣箱とすることはできません。通常の2段の待ち箱の上下をひっくり返しておいて、その上に蜂球が入った分蜂集合ボックスをスライドして重ね、上下をひっくり返します。

しばらく待つと蜜蜂が上に集まりますので、下に巣門をつければ強制捕獲完了です。

とてもメリットのある方法と思いますので、私も今年試してみたいと思います。

強制捕獲の取り込み方法の比較

強制捕獲の主な取り込み方法について比較します。

取り込み方法の比較

方法適した場面長所短所
落とし込み
(巣箱直接)
低い位置の蜂球道具が少ない、蜂への衝撃あり高所に対応できない
網使用蜂球全般網に長い柄をつければ、高所も可。
1人で作業可(脚立を使う場合は2名以上で)
道具の準備が必要
集合板ごと集合板に集合した群最も簡単、衝撃最小集合板への集合が前提

久志冨士男先生の著作などで衝撃を最小限にする方法ほど、その後の群れが温和になり、定着率も上がる傾向があると紹介されています。分蜂集合版を使う方法はその面でもメリットが大きいと感じます。

また、蜜蜂が自分の足で歩いて巣箱に入っていくような取り込み方法を採用すると蜜蜂たちが「自分で選んでこの家に入った」という感覚を持ち、定着率が上がると言われています。これについては私はまだ経験不足で判断しきれないので、是非皆さんの経験についてコメントいただけると嬉しいです。

女王蜂の確認 — 捕獲成功の最重要チェックポイント

女王が入ったか確認する方法

強制捕獲で最も大切なのは、女王蜂が巣箱に収まったかどうかです。これが失敗していると、いくら働き蜂を入れても群れは消滅してしまいます。

確認のサインは2つあります。

  1. 扇風行動:巣門付近で複数の蜂がお尻を上げて羽を扇ぐ。集合フェロモンを放出している証拠です
  2. 蜂の動線:外に残ったミツバチが、迷わず巣箱の方向へ歩いて・飛んで入っていく

逆に女王が入っていないと、ミツバチは巣箱から出てきて元の蜂球の場所に戻ろうとします(※4)。この場合は再捕獲を試みる必要があります。

女王が取り込めていない場合のリカバリー

もし女王が元の場所に残っていそうな場合は、もう一度同じ手順で蜂球を捕獲します。網を元の位置に置いておくと、残ったミツバチが集まってくるので、再度取り込んで巣箱に合流させます。

第一分蜂と第二分蜂以降 — 女王の状態で変わる管理

なぜ女王の状態を見極める必要があるのか

捕獲した群れが第一分蜂(母親女王)なのか、第二分蜂以降(処女王)なのかで、その後の注意点が変わります。

第一分蜂で出てくるのは元巣にいた旧女王蜂で、すでに交尾済みで産卵経験もあります。一方、第二分蜂以降で出てくるのは新しく羽化した処女王(未交尾)で、これから交尾飛行(婚姻飛行)に出かける必要があります(※9)。

第一分蜂と第二分蜂以降の見分け方

自分の飼育群からの分蜂の場合はよく観察しておけば何番目の分蜂かはもちろん分かります。一方自然からの蜂球の場合、完全に確実な見分け方はありませんが、以下の手がかりで総合判断します。

  • 時期:シーズン序盤(地域の分蜂開始から最初の数日〜1週間)は第一分蜂が多い
  • 群れの規模:第一分蜂は大きく、第二分蜂以降は小さくなる傾向。ただし第一分蜂が小さい年もある

第一分蜂(母親女王)を捕獲した場合

第一分蜂は初心者向きです。すでに後尾済みですので捕獲後すぐに造巣・産卵が始まり、1〜2週間で巣板が目に見えて伸びていきます。定着率も高く、特別な配慮なしで通常の管理でうまくいくことがほとんどです。

ただし女王の寿命は3年ほどと言われていますので、3年目の母親女王の場合は、産卵が少なかったり、最悪女王が寿命を迎えてしまうということもあり得ます。

第二分蜂以降(処女王)を捕獲した場合

処女王群はすこしリスクがあります。交尾飛行という関門があるためです。

新女王は捕獲後の数日後後から1週間くらいで交尾飛行に出ます。雄蜂が集まる雄蜂集合場所(DCA:Drone Congregation Area)で複数の雄蜂と交尾し、巣箱に戻ってきます。この飛行中に鳥に襲われたり、悪天候で戻れなかったりすると、群れは女王を失って、無王群となってしまいます。

無王群になると、働き蜂が産卵を始めて雄蜂ばかりが生まれるようになり、群れは徐々に消滅していきます。この状態からの復活はニホンミツバチでは非常に難しく、対処が困難です。

処女王群を捕獲した場合はまだ大喜びはできません。定着確認まで2〜3週間は様子見が必要です。花粉の搬入が安定して見られるようになれば、産卵が始まった証拠と判断できますので、本当に喜べるのはそのタイミングとなります。

交尾飛行の仕組み — 参考情報

交尾飛行は、新女王が羽化してから約1週間後に始まることが多く、晴れて気温の高い日の午後に行われます。女王はDCAで複数(5匹程度)の雄蜂と交尾し、生涯分の精子をお腹に貯えます。

産卵は、卵から羽化まで女王蜂で約16日、働き蜂で約21日、雄蜂で約24日かかります。捕獲後に「いつ働き蜂が増え始めるか」を予測する目安にもなる数字です。

取り込み後の定着率を上げる — 逃去防止の実践策

強制捕獲は自然入居より逃去リスクが高い — 私の翌日引越し体験

強制捕獲で最も悩ましいのが、数日以内に逃げられてしまうことです。私自身、強制捕獲した群れが翌日には10メートルほど離れた場所に置いてあった待ち箱に引っ越してしまった経験があります。

これは想像ですが、分蜂群は飛び出した時点ですでに「次の引っ越し先」を探索蜂が見つけていることがあるようです。捜索蜂が新しい候補地を見つけて報告し終わっていれば、人間が無理やり別の巣箱に入れても「ここじゃない、あっちに行く」という意思は変わりません。

これを聞くと「じゃあ強制捕獲は無駄なの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。逃去防止策をきちんと講じれば定着率は大きく上がるとおもっています

以下、具体的な手順を紹介します。

なお、最初に補足しておくと、これらの逃去防止策は強制捕獲特有のもので、自然入居の場合は不要です。自然入居の群れは「自分で選んだ家」ですから、余計なことをせずそっとしておくのが最善です。

設置場所の選定と環境づくり

定着しやすい設置場所には共通点があります。

  • 直射日光が午後まで当たらない(落葉樹の下など)
  • 雨風が直接吹き込まない
  • 人や家畜が頻繁に通らない静かな場所
  • 巣門は東〜南向き
  • 周辺に蜜源植物がある

新品の巣箱は匂いを嫌われるため、古い巣箱を使って、スノコにニホンミツバチの蜜蝋を薄く塗っておきます。これも自然入居を狙う待ち箱と同じです。

2km以上の移動で記憶をリセットする

ニホンミツバチは強力な帰巣本能を持っていて、元の巣の位置を正確に記憶しています。中途半端な距離(数百メートル〜1km程度)では、記憶を頼りに元の場所や別の候補地に戻ってしまいがちです。

これを断ち切るには、直線距離で2km以上離れた場所に移動させることが必要です。この移動によって蜜蜂のの行動半径外となり、記憶のリセット効果が期待できます。

移動は日没後〜翌朝の働き蜂が出る前に行うのが原則です。日中に移動すると、外に出ていた働き蜂が元の場所に戻ってしまいます。

ハチマイッター(逃去防止装置)の使い方

ハチマイッターは、巣門に取り付けて女王蜂だけを通さない金属製の格子です。働き蜂は出入りできるので、女王が出られない=群れが逃げられない、という仕組みです。

使用時の注意点を整理します。

  • 装着期間:おおむね4〜7日が目安。「7日で外す」という飼育者もいます
  • 第一分蜂(旧女王)の場合:そのまま装着しておけばよく、比較的シンプル
  • 処女王群の場合:交尾飛行を妨げてしまうため使い方に注意が必要。「午後3時頃に外して20分ほどで戻ってくるので再装着」という運用もありますが、雨が続く時期は短期使用でも交尾阻害のリスクがあるとのことで、上手く使用することは少し難しいです。
  • 長期装着のリスク:処女王の交尾機会を完全に奪うと、結果的に無王群になり群れが消滅します

中級者の中には「最初の頃は使ったが、今は使わない」という方も多くいます。「逃げる群れは何をしても逃げる、定着するように丁寧に取り込む方が本質」という考え方です。一方で、「巣枠式に入れる時など、心配な状況では数日付ける」という使い分けをしている方もいるようです。

私個人の意見としては、処女王群への装着は慎重にして、第一分蜂群(母親女王)でどうしても定着させたい場合に限って数日間使うのがバランスの良い使い方だと思います。

暗所保管で定着を促すやり方

捕獲後、網ごと2〜3日暗所に置いておくと、ミツバチが狙っていた新しい引っ越し先の記憶を忘れる効果があると言われています。換気を忘れずにして地下室などの暗い場所で保管するとのことです。

私自身はまだ試したことが無いので、参考情報として押さえておくのが良いかと思います。

ただしこの方法は、処女王群には使いにくい点があります。交尾飛行ができなくなるためです。第一分蜂群限定の選択肢と考えてください。

処女王群の場合の追加注意

処女王群を扱う場合、上記の対策と「交尾飛行を確保する」ことを両立させる必要があり、難易度が一気に上がります。信州日本みつばちの会などで紹介されている方法もありますが、手間がかかります。

2km以上先に移動させる場合、移動先にもニホンミツバチがいて雄蜂集合場所が成立しているかが課題になります。そうでなければ女王は交尾相手を見つけられません。「処女王群は無理に動かさず、その場でじっと様子を見る」「母親群(第一分蜂)だけを2km移動させる」という運用の方が安全だと考えています。

翌朝〜数日のチェックポイントと逃去サインの見分け方

捕獲翌日から数日で定着するかどうかが予想できますが、あまり頻繁に覗き込まないようにしましょう。

良いサイン

  • 朝の活動開始時間に、他の群れと同じくらいの時間にミツバチが出入りを始める
  • 花粉を後ろ足につけて運び込む蜂が見られる
  • 昼過ぎに巣門前で時騒ぎ(記憶飛行)をしている

逃去のサイン

  • 朝になっても1匹も出入りがない、もしくは数十匹だけが出てそのまま
  • 外勤蜂がほとんど活動しない
  • 巣箱内が異様に静か

失敗・トラブル事例と予防策

逃去された:原因と再発防止策

私の「翌日引越し」体験のように、逃去は誰にでも起こりえます。原因として考えられるのは、捕獲時の衝撃が大きかった、巣箱の環境が悪い、捜索蜂が既に別の候補地を見つけていた、など複合的です。

予防策は本記事で解説してきた通り、衝撃を与えない取り込み・適切な設置場所・必要に応じた逃去防止策の併用に尽きます。

女王を取り損ねた:蜂球がざわついて飛び立った体験

私が経験した最も悔しい失敗は、分蜂集合板に蜂球ができているのを発見し、捕獲の準備を始めたものの、蜂球の表面がざわついていて、準備が終わる前に飛び立っていったケースです。

後から振り返ると、蜂球を見た時点ですでに新しい行先が決まりかけていたのでしょう。表面がざわついている=もう飛び立つ寸前、というサインだったのです。「いつでも捕獲できるように網と巣箱はすぐ取り出せるよう準備しておけばよかった」というのが、私の最大の反省点でした。

分蜂シーズン中は、網と巣箱を常に車に積んでおく、玄関に出しておくくらいの準備が功を奏します。

刺された:正しい防護と応急処置

分蜂群はおとなしいとはいえ、刺される可能性はゼロではありません。しつこく攻撃してくる場合もあります。

必ず防護服を着て油断しないようにした方が良いと思います。

刺された場合の応急処置は以下の通りです。

  1. 針が残っていればカードなどで横にスライドさせて取り除く(指でつまむと毒袋を絞ってしまう)
  2. ポイズンリムーバーで毒をできるだけ吸い出す
  3. 流水でよく洗う
  4. 冷やす
  5. アナフィラキシーの兆候(息苦しさ・全身の蕁麻疹・血圧低下など)があれば即119番

なお、過去にハチに刺されてアレルギー反応が出たことがある方は、エピペン(アドレナリン自己注射器)の処方を医師と相談しておくことをお勧めします。実は、私もエピペンを常備しています。

近隣クレームへの対応と事前コミュニケーション

養蜂は近隣との関係づくりが何より大切です。事前に「ニホンミツバチを飼っている、刺すことはほとんどないが、もし困ったら言ってほしい」と一言伝えておくだけで、トラブルは大きく減ります。蜂蜜を少しおすそ分けするのも良いコミュニケーションになります。

よくある質問(FAQ)

蜂球はどのくらいの時間そこに留まりますか?

短いものは数十分、長いものでは数日とされていますが、多くの場合は翌日までに飛び立ちます。発見したら早めに対応するのが基本です。

雨の日でも捕獲できる?

天候が急変して雨になった場合、ミツバチは固まったまま耐えており、捜索蜂も飛ばないので、ある意味で全数収容しやすい条件とも言えます。ただし作業者側の安全(足場のすべりなど)は要注意です。

待ち箱と強制捕獲、どちらを優先すべき?

これから始める方は待ち箱への自然入居から始めることになります。自然の蜂球を見つけるのは確率が低いからです。飼育群を持ったら分蜂時の蜂球もかなり見附なスクなりますので、強制捕獲も活用していきましょう。

飼育届は捕獲前に出すべき?

理想は捕獲前です。シーズン前の1月末までに「これから始める予定」として届け出を済ませておくとスムーズです。届け出は無料で、罰則よりも「行政が地域のミツバチ生息状況を把握する」目的の制度です。

分蜂集合板はどこに置けば一番集まりやすい?

飼育群の元巣箱から10メートル以内、開けた目立つ場所、高さ2m前後が基本です(※7)。周囲に高い木が密集していると、そちらに集合されてしまうこともありますが、それでも集合板を置いておけば確率は上がります。

刺された場合の応急処置は?

針をクレジットカードなどを使って取り除き、ポイズンリムーバで可能な限り毒を吸い出し、流水で洗い、冷やす、というのが基本です。アナフィラキシー症状が出た場合は救急車を呼んでください。一度ハチアレルギーの診断を受けたことがある方は、養蜂を始める前に医師に相談することをお勧めします。

まとめ:強制捕獲を成功させる5つの心得

長くなりましたが、最後に強制捕獲を成功させる心得を5つにまとめます。

  1. 準備は冬のうちに:巣箱・網・集合板・防護服を分蜂開始の1〜2週間前までに揃える
  2. 集合板を活用する:飼育群がある方は10m以内に必ず1枚は設置。捕獲難易度が劇的に下がります
  3. 蜂球の状態を見極める:表面がざわついている=飛び立つ寸前。落ち着いてから取り込む
  4. 女王蜂の確認を最優先に:扇風行動と蜂の動線で確認。取り損ねたら再捕獲
  5. 逃去防止策を惜しまない:強制捕獲は自然入居より逃げられやすいことを前提に、移動・暗所保管・必要に応じてハチマイッターを使い分ける

ニホンミツバチの飼育は、捕獲して終わりではありません。ここから採蜜・越冬・翌春の分蜂と、長い付き合いが始まります。捕獲のコツを掴んで群れを増やせるようになると、養蜂の世界がぐっと広がります。

最初から完璧を目指す必要はありません。私自身、いまだに失敗しますし、毎年新しい発見があります。「今年はこの群れを定着させられた」「集合板にちゃんと集まってくれた」と、小さな成功を積み重ねていくのがニホンミツバチ養蜂の楽しさだと思います。

みなさんの捕獲が、実り多いものになることを願っています。

参考記事

巣箱製作がまだの方はこちらを御覧下さい。

ニホンミツバチ飼育全般について以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

参考:YouTube動画

私がニホンミツバチを飼育している様子をYouTube動画にしていますので、良かったらご訪問いただければと思います。

YoutTubeチャネルはこちらです。

南箱根の田舎暮らし – はちみつ果樹園だより

終わりに

ここまで読んでくださりありがとうございました。この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

それでは、楽しい養蜂ライフを!

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この記事を書いた人

自然に囲まれた場所で、果樹を育てたり日本蜜蜂を飼ったりしながら暮らしています。
田舎の暮らしも不便さばかりではなく、便利な道具や家電を取り入れることで、快適さと楽しさの両立を目指しています。
このブログでは、養蜂や果樹栽培といった趣味の実体験に加えて、暮らしをちょっと便利にしてくれる道具の紹介や、将来に備えた気軽なマネーの工夫についても発信しています。
田舎でも都会でも、暮らしを「ちょっと楽しく、ちょっと賢く」するヒントをお届けできれば嬉しいです。

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