ニホンミツバチ飼育ガイド|初心者でもできる自然養蜂の始め方

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ニホンミツバチ(日本ミツバチ、日本蜜蜂)を飼育すれば、希少で美味しいハチミツを自分で収穫できると聞いたけど、本当に個人でも養蜂ができるのか詳細を知りたい。でも、何から調べればいいか分からないしトラブルも少し心配……。この記事に辿り着いたあなたはそう考えているに違いありません。

「ザ!鉄腕!DASH!!」でニホンミツバチの養蜂を知って興味を持たれた方が多いかも。もしかしたら、私の以下の記事を読んで、ニホンミツバチを飼育してみたいと思ってくださった方もいらっしゃるかもしれません。

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🐝あなたがニホンミツバチ飼育を始めるべき理由10選|健康×DIYで充実 「自然に触れたいけれど、毎日は時間が取れない」、「DIYや工夫が好き」、「健康に良い趣味を探している」。そんな方におすすめしたいのが、日本在来種の蜜蜂であるニホンミツバチ(日本蜜蜂)の飼育です。養蜂はプロの世界というイメージがあると思いますが、ニホンミツバチなら素人でも学びながら飼育可能。この記事を読むことにより、ニホンミツバチを飼育することで得られるメリットを十分理解できると思います。皆さんもニホンミツバチを飼育してみませんか?

ニホンミツバチの記事やYouTube動画をいくつか見てみたものの、

  • 何から始めればいいかイマイチ分からない
  • どんな一年になるのかイメージが湧かない
  • 自分でも本当にできるのか不安

というところで止まっている人は、きっと多いと思います。

この記事を読んでいただくと、ニホンミツバチ養蜂の“全体像”を大まかに把握することができます。

  • ニホンミツバチ養蜂が「どんな一年のリズムの趣味なのか」イメージできる
  • 自分の庭や畑、知り合いの場所などのどこに巣箱を置けそうか、候補が浮かぶ
  • 必要になる道具や費用感がざっくり分かる
  • 始める前に確認しておくべきルールやマナーの概要がつかめる
  • 「自分にもできるかも」と思えるか判断できる
目次

ニホンミツバチってどんな蜂?セイヨウミツバチとの違い

日本で「養蜂の対象」になるミツバチには、主に2種類います。

  • ニホンミツバチ(学名:Apis cerana japonica
  • セイヨウミツバチ(学名:Apis mellifera

セイヨウミツバチは、世界中の商業養蜂で使われている主役で、たくさんのはちみつを集めるのが得意です。品種改良が行われており、主にイタリア系と呼ばれる品種が使われているようです。巣枠式の巣箱を使って、巣枠を1枚ずつ抜きながら点検・採蜜する「家畜」としての養蜂スタイルが基本になります。一般にイメージする養蜂はこちらですね。

それに対してニホンミツバチは、もともと日本の山や里山の樹洞などに巣を作ってきた在来のミツバチです。特徴をざっくりまとめると、こんなイメージです。

  • 北海道と沖縄を除く日本全国の自然で野生で生きている
  • 一般にセイヨウミツバチよりもおとなしい(環境や群れによっても異なる)
  • ニホンミツバチの養蜂は、巣箱を用意しておいて野生の群れに入居してもらって育てるのが基本
  • 半分自然に任せる形なので、セイヨウミツバチに比べるとお世話の手間が段違いに少なく、個人の趣味に向く
  • 採れるはちみつの量は少なめだが、「その土地や季節の百花蜜」で様々な香りがあり唯一無二の味。幻のハチミツと言われています。

ニホンミツバチの養蜂は、品種改良した蜜蜂を人為的に育てるのではなく、自然にいるニホンミツバチに用意した巣箱に入居してもらって育てる「自然寄りの養蜂」です。

ニホンミツバチ飼育の一年間|ざっくり季節ごとの流れ

次に、「一年を通して何が起こるのか」を大まかに見てみましょう。細かい作業の手順までは踏み込みません。「この季節はだいたいこんな仕事があるんだな」という概要だけ説明します。

春〜初夏(4〜6月):分蜂と捕獲

地域によって異なりますが、4〜6月ごろが春分蜂のピークになります。

「分蜂」とは群れの中で新しい女王蜂が生まれ、古い女王蜂が群れの働き蜂の約半数を連れて古巣を出て、新しい住処に移る「群れのお引っ越し」です。これで1群が2群に増えるわけですが、元の巣からは更に数回の分蜂が起きることがあります。

ニホンミツバチの養蜂を始めるにはこの新たに分蜂した群れを用意した巣箱(「待受箱」と言います)に誘い、入居してもらうことから始まります。巣箱には誘引する仕掛けをしたり、置き場所を工夫したりするのですが、必ずしも簡単に入居するわけでは無いのがニホンミツバチ養蜂の面白いところです。

入居が確認できたときには小躍りしたくなるほど嬉しくなるのがこの趣味の醍醐味です!趣味の釣りに似ているかもしれません。釣り好きの方はハマるかも。

なお、既にニホンミツバチを飼育している人は「強制捕獲」というテクニックを使えることがあります。これについては今後別記事で取り上げます。

夏(7〜8月):採蜜、夏分蜂、暑さ対策

前年からの越冬した群が分峰した場合、分蜂後の群れが初夏にハチミツを十分溜めることがあります。この場合は、初夏に採蜜行うことができます。重箱式巣箱の場合、一番上の段を切り取ることで、ハチミツを収穫します。一方、その年に入居した群れはまだ成長中でハチミツは溜めていませんので採蜜しません。

また、春に分峰した群れが順調に育って、そこから再度分峰する夏分蜂(孫分蜂ともいう)が起きることがあります。そのため、夏も待受箱は撤去せずに、夏分蜂群の入居を狙います。

さて、この時期は暑さ対策で頭を悩ます時期でもあります。最初から巣箱を落葉樹の樹の下に設置しておくという工夫をしたり、すだれを付けて直射日光を避けるようにします。

それでも、最近の猛暑から、暑さで巣板が柔らかくなり、自重で落ちてしまう「巣落ち」が起こることもあります。巣落ちしてしまうとかなりの確率で群れが逃去してしまいますので、注意が必要です。

秋(9〜11月):冬越しに向けたチェックと調整

秋は、冬越しのことを意識し始める季節です。

巣が巣箱の何段まで育っているか、蜜蜂の数は十分か、また、持ち上げようとしてみてどのくらいの重さになっているかを確認します。

こういった情報から「このまま冬に入って大丈夫そうか」を考えます。越冬に十分以上のハチミツが溜まっていると考えられる場合は、秋にも待望の採蜜ができます!

花が少なくて貯蜜が足りない年は、越冬を乗り切れるようにするため、給餌を検討することもあります。ただし、何をどのように給餌するか、など注意すべき点も多いテーマですので、別記事で詳しく解説する予定です。

冬(12〜2月):越冬期にできること

冬のあいだ、ニホンミツバチたちは巣箱の中で固まり、自分たちの胸の筋肉を小刻みに震わせることで巣内を温めています。外にほとんど出てこない日が続いても、中は暖かく、ハチミツを徐々に消費しながら生活していることが多いです。

この時期に人間側ができることは少ないのですが、アカリンダニ感染の対策やハチミツが尽きてしまいそうな時の給餌を行う場合があります。ただし、冬のニホンミツバチは相当攻撃的になっていることがありますので、お世話する場合は慎重にしないといけません。

また、春の分蜂シーズンに向けて、巣箱の準備や清掃などを進めておきます。寒い時期なのでとても億劫ではありますが、春の入居を期待して準備しましょう。

早春(3〜4月):活動再開と分蜂シーズンの準備

気温が上がる日が増えてくると、春の分蜂に向けて、巣の中では育児が本格的に動き始めています。巣箱の中を内検すると、順調な場合は蜂数が徐々に増えていきます。遅くともこの頃までには分蜂群の捕獲の準備を完了させておきます。ワクワクした気持ちが高まっていく時期です。

1年の大体の流れが把握できましたでしょうか?まずは、ざっくりイメージしていただければと思います。

ニホンミツバチ飼育に必要な道具とおおまかな費用感

ここでは「どんな種類の道具が必要になるのか」と「ざっくりした費用感」を簡単に説明します。

最低限必要となるもの

巣箱

ニホンミツバチ用の重箱式の待受箱を1〜3セット。購入するか、自作する方法があります。

巣箱台

巣箱を地面から持ち上げるための台です。見た目にこだわるかどうかで費用は変わりますが、コンクリートブロックや農業用のプラスチックコンテナで十分です。

誘引剤

キンリョウヘン、合成誘引剤、蜜蝋など。これらの誘引剤を使用しないと分蜂群の入居は難しいです。詳細は、別記事で詳しく説明する予定です。

防護服

養蜂用の防護服と手袋を購入されることをおすすめします。

おおまかな費用感

ざっくりですが、

  • 巣箱セット(誘引剤付き):数万円
  • ブロックやプラコンテナ:0円〜数百円
  • 防護服と手袋:3000〜4000程度(グレードにもよる)

というイメージで、トータル数万円をスタートラインとして見ておくと、現実的です。もちろん、DIYが得意な人は巣箱を自作すればもっと抑えた予算でもスタートできますし、逆に多くの待受箱を購入すると費用が高くなります。

(PR) 週末養蜂さんのスタートキットは巣箱に誘引剤と教材が全てセットになっているので、これだけで始められます。自作派の方もまずはこれを入手して、巣箱の構造を理解し、教材で学ぶのがお勧めです。

趣味のニホンミツバチ飼育は意外にお手軽な費用で始められます。DIYを組み合わせれば更にお得に始めることも狙えます。

ニホンミツバチの群れをどうやって捕獲するか?

「巣箱を置けば自動的に蜂が入る」というわけではありません。最初の1群をどう迎えるかには、大きく3つのパターンがあります。

分蜂群を待受箱で迎える

もっともニホンミツバチらしい方法が、分蜂群の自然入居を待つやり方です。ざっくりした流れはこんな感じです。

  1. 分蜂シーズン前(春)までに、待箱を複数設置しておく
  2. ニホンミツバチが好みやすい場所に待箱を設置する。その地域の分蜂が始まる少し前に誘引剤を設置する。
  3. 分蜂シーズン中は、偵察蜂が来ていないか、巣門のまわりをしつこく調べている蜂がいないか、などを時々チェック
  4. ある日突然、大量の蜂が待ち箱に入り始める

うまくいくと、こうした「自発的な入居」が起こります。入居率は必ずしも高くないので時間はかかりますが、ニホンミツバチの自然な行動に合わせる方法で、入居時の感動はこれが一番大きいかと思います。

分蜂群を強制捕獲する

既にニホンミツバチを飼育している場合にしか使えない「技」ですが、ニホンミツバチの分蜂群を網などで強制的に捕まえて、飼育箱に入れる方法があります。ニホンミツバチは分蜂時に一旦大きな木の表面などに一旦集まりますので(「蜂球」と呼びます)、それを捕まえます。こちらも別記事で詳しく紹介予定です。

譲渡や購入で群を迎える

捕獲ではなくなりますが、周囲にニホンミツバチを飼っている方がいたり、地域の養蜂コミュニティに参加できる場合は、群を譲渡してもらう・購入するというパターンもあります。

メリットとしては、何年も入居が起きず、いつまで経っても養蜂が始められないということが避けられることです。

一方で、デメリットとしては、群の引っ越しタイミングや方法を相談・調整する必要があったり、運搬の工夫が必要になったり、また、移設後に逃去してしまうリスクがあることです。

特にオークションなどで遠くの地域の蜜蜂を購入することは病気の伝搬や蜜蜂の遺伝子の交雑の面からお勧めしません。

巣箱と設置環境の基本

ニホンミツバチの捕獲や飼育に使用する巣箱とその設置について説明します。

ニホンミツバチ向け巣箱の主なタイプ

趣味のニホンミツバチ養蜂で使われる巣箱には、主に以下のタイプがあります。

  • 重箱式巣箱
  • 丸洞式(丸太くり抜き)巣箱
  • 単枠式巣箱

重箱式巣箱は、四角い箱(重箱)を積み重ねて使うタイプ。もっともポピュラーで、情報も多く、自作もしやすい形式です。採蜜のときには、上段から重箱をハチミツの入った巣ごと切り取ってハチミツを収穫します。

丸胴式巣箱は、丸太をくり抜いて作る、より自然に近いタイプの巣箱です。入居率は高いと言われていますが、製造が大変ですし、また、採蜜もハードルが高めです。

単枠式巣箱はセイヨウミツバチ用の巣箱とよく似た構造の巣箱を使用します。「現代式縦型巣箱」と「か式巣箱」が有名かと思います。管理がしやすく、高度な群れのコントロールができますが、その分、飼育難易度はあがります。

最初の一歩としては、市販のニホンミツバチ用の重箱式巣箱からスタートしてみて、慣れてきたら自作や違う形式にも挑戦、という流れが良いかと思います。

待受箱の設置場所の考え方

春に自然分蜂の入居を狙う際には巣箱を適切な場所に設置することで入居率を高めることを狙います。一般に以下のような場所が入居しやすいと言われています。

  • 落葉樹の木の下など、夏場に太陽が高いと日陰になるが、冬場は日が当たる場所
  • 大きな木の根元など空を飛んでいて目印になるような場所
  • 斜面の上など見晴らしが良くて巣箱から飛び立ちやすい場所

なお、イノシシ、クマ、アナグマ、ハクビシン等が出る地域では、それらの害獣への配慮も必要になります。特にクマはハチミツを好み、巣箱をグチャグチャに破壊することがありますので要注意です。

巣箱の土台と設置

巣箱は、地面に直接置くよりも、台の上に乗せることが一般的です。よく使われるのは数百円のコンクリートブロックですが、その他には農業用のプラスチックコンテナもよく使われています。地面から持ち上げることで雨の際の泥はねを避けることができますし、地面から離すことで湿気も減らすことができます。

蜜蜂が出入りする巣門は南向きか東向きが入居しやすいと言われていますが、北や西向きでも入居することはあります。

巣箱を設置したら風などで動かないように紐などで地面やコンクリートブロックに固定しておきます。

まずは、設置場所をどうするか考えてみましょう。できるだけ複数の離れた場所に設置したほうが入居率が上がります。設置するのは初心者は重箱式巣箱をお勧めします。

入居後のお世話

基本のお世話

ニホンミツバチのお世話は基本的に自然に任せることが中心になります。そのため、週末のみのお世話でも問題ないです。忙しい場合は、月に1〜2回のお世話でも大丈夫でしょう。

群れの調子が良ければ、巣が上から下に伸びてきますので、下まで巣が伸びたら重箱を下に足す(「継箱」と言います)が基本的なお世話となります。その他にはアカリンダニやスムシといった害虫への対応も行ったほうが良いです。

更に、具体的なお世話の詳細にについては、今後別記事で詳しく説明していきます。

給餌について

ここでは群れの調子が悪いときや夏の蜜枯れ時期に行う給餌についても説明しておきます。給餌(きゅうじ)とは、蜂たちのエサ(糖液や花粉代用食)を人間側が補うことです。

なぜ給餌が必要になることがあるのか?ですが、理想を言えば、「自然の花と蜂の力だけで、給餌なしで一年を回す」という状態がベストです。

ただし現実には、その年の花の少なさ、長雨や冷夏・猛暑などの異常気象、群の勢いが弱っているタイミングなどで、貯蜜が明らかに足りない年が出てくることがあります。そういったときに、「このままでは冬を越せそうにない」と判断した場合の“最後の手段”として、給餌を行うという考え方もありかと思っています。

ただし、何を与えるかは注意が必要です。砂糖水を煮詰めて転化糖を自作する方法をネットでよく見かけますが、その過程でHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)という物質が生成される可能性があり、濃度によっては蜂に有害だとする研究も出ています。HMFについては、以下の記事でエビデンスも含めて詳しく整理しているので、給餌を真剣に考えるときにはぜひそちらを読んでみてください。

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【保存版】蜜蜂へ給餌する場合、自作の転化糖液糖は危険です。HMFとは?ミツバチを守る安全な給餌法とは? 日本蜜蜂の給餌について調べていたところ、自作の転化糖液糖の給餌には思わぬ危険性があることが分かりました。副産物のHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)という物質が生成される可能性と、そのリスクを踏まえた「蜜蜂に安全な給餌方法」について詳しく解説します。ハチミツ中のHMF濃度基準についても触れています。

採蜜とはちみつ・蜜蝋の楽しみ方

採蜜は、ニホンミツバチ養蜂の大きな楽しみのひとつです。

ニホンミツバチのハチミツの特徴(量より質)

ニホンミツバチのはちみつは、その年・その場所で咲いたさまざまな花の蜜が混ざった「百花蜜」になります。セイヨウミツバチの様に特定の花の蜜のみを集めるということはありません。

・同じ巣箱でも、年によって色・香り・味わいが少しずつ違う
・少量でも香りが濃く、「スプーンひとさじで満足感が高い」と感じる人が多い

といった特徴があります。

採れる量は、セイヨウミツバチのように何十キログラムというわけにはいかず、1群から1年に数キログラムになることが多いです。「自分の庭や畑・周囲の山から集めてきてくれた蜜」という意味では、かなり特別な一瓶になると思います。これが「幻のハチミツ」と呼ばれている理由です。

初めて食べたニホンミツバチのハチミツは濃厚な甘さに柑橘系の爽やかな香りが少し有り、複雑な後味と相まって、忘れられない味となりました。

採蜜のタイミングとざっくりした流れ

採蜜の詳細な手順は別記事に譲りますが、ごく大づかみに言うと、

  1. 群の勢いがあり、巣箱がずっしり重い時期を選ぶ
  2. 群が越冬にこれから必要とする分を考えて、どのくらいのハチミツを収穫しても大丈夫か見極める。
  3. 重箱式巣箱の場合は、一番上の箱を1段(場合によっては2段)切り取って、下に空の箱を足す。
  4. 採った巣からハチミツを濾して収穫する。

という流れになります。

採蜜の頻度は、地域・年・群の状態によって変わりますが、年に1回、その年の巣箱の「家賃」としてハチミツをいただくというスタンスです。

蜜蝋の回収

採蜜後に残る巣板からは、蜜蝋(みつろう)も取れます。蜜蝋の作り方も今後別記事で解説する予定です。

蜜蝋は、

・リップクリームの材料
・木製品のお手入れ用ワックス
・ハンドクリームや軟膏のベース
・蜜蝋キャンドル

など、いろいろな形で活用することができます。また、何と言っても新しい群れの誘引剤として巣箱の内側に塗るという用途に使えます。

外敵・病気・トラブルの全体像

「ニホンミツバチにとっての代表的な脅威」の概要を説明します。

スズメバチ・スムシ・害獣などの外敵

スズメバチ

特にオオスズメバチは、巣を一気に壊滅させてしまうこともある強敵です。秋口に巣門前に居座って蜂を狙うことが多く、巣門を鉄製の枠で覆うなど、巣箱の中に大量に侵入されないように対策を考える必要があります。

スムシ(ハチノスツヅリガの幼虫)

巣箱の中に入り込み、巣板を食べてしまう害虫です。群が弱っているときに被害が広がりやすく、巣箱の清潔さや群の体力維持が重要になります。

アカリンダニ

アカリンダニは外来のダニでニホンミツバチの器官の中に寄生することでニホンミツバチが十分呼吸ができなくなります。アカリンダニが蔓延した群れは冬を越せず、ハチミツを残したまま消滅してしまうこともあります。

ミツバチヘギイタダニ

ニホンミツバチはミツバチヘギイタダニには比較的強いですが、群れが弱ると悪影響があるようです。なお、セイヨウミツバチでは対策が必須です。

哺乳類(クマ・アナグマ・イタチ・ネズミなど)

地域によって出てくる動物は違いますが、巣箱をひっくり返されたり、穴をあけられたりすることがあります。金属製のスタンドや電気柵など、本格的な対策が必要になるケースもあります。私も冬場にアナグマに執拗に巣箱を狙われたことがあります。

病気(ウイルス病)

腐蛆病やいくつかのウイルス病が知られています。

困ったときに相談できる情報源・コミュニティ

ニホンミツバチの情報は、書籍やWebサイト、地域の養蜂会、SNSコミュニティなど、いろいろな場所に点在しています。

・地域の養蜂会や、在来ミツバチの会
・ニホンミツバチ専用のQ&Aサイトやフォーラム
・信頼できそうな個人ブログやYouTubeチャンネル

などを、ふだんから少しずつチェックしておくと良いと思います。

このブログでも、参考になりそうなサイトや書籍は、別の記事で少しずつ紹介していく予定です。

外敵や病気を列記したため心配になったかもしれません。ニホンミツバチはなかなか強いのでキチンと対処していけば大丈夫です。

ニホンミツバチと庭づくり・家庭果樹の相性

ニホンミツバチ養蜂は、「庭づくり」や「家庭果樹」との相性もとても良いです。将来的に果樹記事を増やしていく予定なら、ここは大きな強みになります。

ニホンミツバチがよく訪れる花と、庭でできる工夫

地域や季節によって変わりますが、ニホンミツバチがよく訪れる花の例としては、

・サクラ・ウメ・モモなどの花木
・クローバー・レンゲ・シロツメクサなどの草花
・クリの花・アカシアなどの樹木
・秋の野草(セイタカアワダチソウなど)

などが挙げられます。

元々は日本の古来からの雑木林の木々の花の蜜に最適化していて、ここ数百年の人工のスギやヒノキの森では蜜源が少ない状況です。できれば、庭にはニホンミツバチの蜜源になる木々を植えたいですね。

家庭果樹(キウイ・柿・ブルーベリーなど)との付き合い方

キウイ、柿、ブルーベリー、モモ、カンキツなど、ニホンミツバチが訪れやすい果樹はたくさんあります。

もちろん、ミツバチだけが受粉しているわけではありませんが、

・果樹の花の時期と、蜂の活動期が重なり受粉率が上がって、結実が増える。
・庭全体が「花とミツバチの景色」になってフォトジェニック

という意味でも、とても相性の良い組み合わせです。

農薬とミツバチの基本的な考え方

農薬との付き合い方は、非常にデリケートなテーマです。

特にネオニコチノイド系の農薬(通称「ネオニコ」)はヨーロッパで蜜蜂減少の原因とされて使用が禁止されています。蜜蜂に対する急性毒性はそれほどではないが、撹乱効果があって蜜蜂の群れの維持に悪影響があるとの見解です。一方で、蜜蜂の減少の主な原因は新種のダニであるという意見もあるようです。

日本ではネオニコは農薬の主流として使用されていますので、ニホンミツバチの飼育場所の近くでは使わないことが望ましいです。

始める前に考慮しておきたい点

せっかくニホンミツバチ飼育に興味があってワクワクしているところに水を差す話で恐縮ですが、最低限これらを抑えておくべき点をお話します。色々と準備したのに、後になってニホンミツバチの飼育が難しくなってしまわないように最初に確認しておくと良いと思います。

巣箱の設置場所

実はこれが一番重要で、最初の確認する必要があると思います。住宅街でお隣さんと近い場合やマンションに住んでいる場合は残念ながらニホンミツバチの養蜂はかなり難しいかと思います。なんとか自宅以外に設置場所を見つけるしかないので、また別記事で詳しく考察したいと思います。一方、田舎の一軒家に住んでいてお隣さんとの距離がかなりある場合は多くの場合は問題ないと思います。

ご近所との関係

お隣さんとまあまあ距離がある場合も、巣箱の置き場所によってはトラブルになる可能性がありますので以下のような点に注意しましょう。特に洗濯物は盲点で、蜜蜂は黄色い糞を落としますので、飛行方向に洗濯物や車がある場合に蜜蜂の糞で汚れてしまう可能性があります。また、ニホンミツバチは大人しいとはいえ、一般には「蜂は刺す」というイメージがあると思いますので、特に子供がアクセスする場所は避けたほうが無難です。

  • 隣家の玄関や洗濯物に近くではないか?
  • 隣家の車庫の近くではないか?
  • 子どもの通学路や遊び場が近くにないか?

飼い始める前に、一番近いお宅の方にだけでも軽く説明しておくといいですね。例えば、「ここにニホンミツバチを少し飼ってみようと思っていて、場所や対策には気をつけます。もし気になることがあったら遠慮なく言ってください。」

養蜂の届出と自治体の特別ルール

飼育届の提出(全国共通)

日本では、ミツバチの飼育について、国の法律(改正養蜂振興法、平成25年1月1日施行)があり、セイヨウミツバチ、ニホンミツバチを問わず、毎年1月末までに「蜜蜂飼育届」の提出が必要です。平成25年1月1日からは趣味で蜜蜂を飼育する場合も飼育届の提出が義務付けられました。といっても、やること自体は難しくありません。「蜜蜂飼育届 〇〇県」で検索して、様式に記入して指定の窓口(家畜保健衛生所)に提出するだけです。

自治体の特別ルール

大阪府には比較的厳しい特別ルールがあることが知られています。住宅地・学校・工場・道路・公園など「人が常時出入り・通行・集合する場所」から20m以上離して巣箱を置くこと、などを規定した条例があります。その他の県では条例ではなく、「養蜂ガイドライン」としてルールを定めている場合がありますので、確認したほうが良いと思います。

安全面(アレルギー)との付き合い方

ミツバチは、巣や仲間を守るために刺すことがあります。多くの人にとっては、刺された部分が赤く腫れて数日かゆい・痛い、くらいでおさまりますが、ごく一部の人はアレルギー体質のため、強い全身反応(アナフィラキシー)を起こす可能性があります。

ここで大切なのは、必要以上に怖がるのではなく、「刺される可能性はゼロではない」ことを理解したうえで、準備をしておくことだと思います。過去にハチや虫に刺されて、全身にじんましんが出た・呼吸が苦しくなった、という経験がある、強いアレルギー体質だと医師に言われたことがある、という場合は、一度かかりつけ医に相談しておくと安心です。

そのうえで、日常の対策としては、必ず防護服、防護手袋、長袖長ズボンをしてお世話をすることを徹底することが大事です。ニホンミツバチが大人しいことが分かって慣れてくると、つい防御服や手袋をつけるのが面倒になったりしますが、それが一番危ないと思います。私自身は2回ほど刺されましたが、かなり強いアレルギー反応が出たので注意を怠らないようにしています。

巣箱の設置に問題がないことを養蜂を始める前に確認しておきましょう。

この後はどうすればいいの?

ここまで読めば、

・ニホンミツバチ養蜂がどんな趣味なのか
・一年を通して何が起きるのか
・どんな準備が必要になりそうか

という「全体像」はかなり見えてきたと思います。

どこまでも奥の深い趣味である「ニホンミツバチ飼育」。この記事をあなたが読むのが何月かは分かりませんが、もし興味を持ったなら次の春の分蜂までに知識をつけて、今から準備を整えましょう!

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この記事を書いた人

自然に囲まれた場所で、果樹を育てたり日本蜜蜂を飼ったりしながら暮らしています。
田舎の暮らしも不便さばかりではなく、便利な道具や家電を取り入れることで、快適さと楽しさの両立を目指しています。
このブログでは、養蜂や果樹栽培といった趣味の実体験に加えて、暮らしをちょっと便利にしてくれる道具の紹介や、将来に備えた気軽なマネーの工夫についても発信しています。
田舎でも都会でも、暮らしを「ちょっと楽しく、ちょっと賢く」するヒントをお届けできれば嬉しいです。

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