ニホンミツバチの飼育を始めたい —— そう思ったとき、最初にして最大の関門が「群れの入手」です。
セイヨウミツバチと違い、ニホンミツバチは購入して手に入れることが困難です。野生の群れが春に行う「分蜂(ぶんぽう)」 —— つまり引越しのタイミングを狙って、空の巣箱(待ち箱)に入居してもらうしかないのです。
「ただ箱を置いて待つだけでしょ?」と思うかもしれませんが、じつはそれほど甘くはないです。何も考えずに1箱だけ置いても、入居率は低いのです。しかし、いくつかのコツを知っているだけで、その確率は飛躍的に上がります。
この記事では、分蜂の基本的なメカニズムから、巣箱の準備、誘引テクニック、配置戦略、そしてベテラン養蜂家が実践するプロの裏技まで、捕獲に必要な知識のすべてを徹底的に解説します。
初めてニホンミツバチの飼育に挑戦する方はもちろん、これまでなかなか捕獲できなかった方にも、きっと新しい発見があるはずです。
この記事では、ニホンミツバチの捕獲に重要な以下の7つのポイントを詳しく説明します。
- 「基礎知識」
- 「準備」
- 「誘引」
- 「場所と数」
- 「時期」
- 「マインドセット」
- 「入居後の対応」
ミツバチの気持ちになって「住みたい物件」を用意する —— 不動産に例えると、あなたはミツバチ向けの優良物件オーナーを目指すわけです。家賃はもちろん美味のハチミツです。
では、さっそく見ていきましょう。
【基礎知識】ニホンミツバチの引越し「分蜂」のメカニズム
まずは、ニホンミツバチがなぜ・いつ・どうやって引越しをするのか、その基本を押さえましょう。相手を知ることが捕獲成功への第一歩です。
分蜂とは?なぜ引越しをするのか
春になって群れの勢いが増し、巣の中で新しい女王蜂が育ち始めると、古い母親の女王蜂は「そろそろ私の出番ね」とばかりに、約半数の働き蜂を引き連れて巣を飛び出します。これが「分蜂」です。いわばミツバチの種族繁栄のための引越しであり、一つの群れが二つに分かれて増えていく自然の営みです。
ここで知っておきたいのは、分蜂は1回で終わらないということです。最初に母親女王が出ていく「第1分蜂(母親分蜂)」の後、巣の中では新女王が次々と羽化します。先に羽化した長女の女王蜂が巣に残ると、次に羽化した次女の女王蜂がさらに働き蜂を連れて出ていく「第2分蜂」「第3分蜂」が起こることも珍しくありません。
つまり、1つの群れから春の間に何度も分蜂が発生する可能性があり、それだけ捕獲のチャンスがあるということです。ただし、回を重ねるごとに群れの規模は小さくなっていきます。
分蜂シーズンはいつ?「分蜂マップ」を活用しよう
分蜂が起こる時期は地域によって大きく異なります。おおよその目安としては以下のとおりです。
- 九州南部:3月上旬〜
- 九州北部:3月中旬〜下旬
- 四国・中国・近畿・東海・関東: 3月下旬〜4月上旬
- 北関東・甲信越: 4月上旬〜中旬
- 東北: 4月下旬〜5月上旬
重要なのは、分蜂の大部分は最初の1ヶ月間に集中するということです。この短い期間を逃してしまうと、次のチャンスは翌年まで待つことになります。
分蜂の流れ ── 探索蜂の下見、蜂球での投票、そして新居へ
ニホンミツバチはいきなり群れ全員で新居に飛んでいくわけではありません。分蜂には段階があります。
まず、分蜂が近づくと、群れの中から「探索蜂」と呼ばれるベテランの働き蜂が四方八方に飛び立ち、新居の候補地を探し始めます。ただし、この段階はあくまで下見であり、まだ引越し先は決まっていません。
分蜂当日、女王蜂と約半数の働き蜂が巣を飛び出すと、まず元の巣の近くにある木の枝や塀などに集まり、大きなブドウの房のような塊を作ります。これが「蜂球(ほうきゅう)」です。蜂球の状態は数時間で新居に飛び立つこともあれば、天候次第では数日間続くこともあります。
一見じっとしているだけに見える蜂球ですが、活発な「新居選び」が進行中です。蜂球から探索蜂が飛び立ち、候補地を見つけると蜂球に戻って表面で有名な「8の字ダンス」を踊り、場所の方角・距離・品質を仲間に伝えます。それを見た別の働き蜂が現地を「内見」しに行き、気に入ればその蜂もダンスを踊って賛成票を投じます。
最初は複数の候補地が同時に宣伝されますが、良い物件ほどダンスが熱心に踊られ、内見に向かう蜂が雪だるま式に増えていきます。こうして徐々に意見が一つの候補地に収束し、十分な数の探索蜂の賛同が得られると、ついに群れ全体が一斉に飛び立って新居へ引越しを開始するのです。
ですから、あなたの待ち箱の周りを飛ぶミツバチが、最初は2〜3匹だったのに日に日に増えてきた…という変化が見られたら、それはまさに探索蜂の間で「あの物件いいよ!」という口コミが広がっている証拠。入居への期待が高まる瞬間です。ただし、この段階で興奮して近づきすぎると逆効果ですので、遠くから静かに見守りましょう。
【準備編】ミツバチが好む「待ち箱(物件)」の準備
初心者におすすめは「重箱式」と「ハイブリッド式」
ニホンミツバチの巣箱にはいくつか種類がありますが、これから始める初心者の方には、自作も管理も簡単な「重箱式巣箱」が圧倒的におすすめです。重箱式巣箱については別の記事で詳しく説明していますので、参考にして下さい。
ニホンミツバチを捕獲するための巣箱(待ち箱)も、この重箱式巣箱をそのまま用います。待ち箱専用の巣箱を用意するわけではありません。
待ち箱(捕獲用)は「2段構成」が基本です。最初から3段以上重ねた巣箱を待ち箱にするのは準備が大変ですし、入居後にミツバチが偏った巣を作ってしまうおそれがあります。まずはシンプルな2段の待ち箱をできるだけ多く用意することに集中しましょう。
また、一番下を丸太のくり抜き(丸洞)にし、上を重箱にした「ハイブリッド式巣箱」も、自然の大木のうろに似ているため非常に捕獲率が高いとされています。少し準備が大変ですが、なかなか入居の機会に恵まれない方はチャレンジしてみるのも良いと思います。
新しすぎる木の巣箱は「野ざらし」にする
もし用意した巣箱の杉板が新しい木の匂いが残っている場合は、野生のミツバチはこの匂いを嫌がるため、1ヶ月以上は野外で「雨ざらし」にし、匂いを抜く方がよいと言われています。
水に一週間ほど浸けてアク抜きする方もいらっしゃるようですが、よっぽど製材直後の木の匂いが強い材料でない限り不要と思います。
ミツバチは新築より「入居履歴のある中古物件」がお好き
人間はピカピカの新築を好みますが、ニホンミツバチの不動産事情は真逆です。以前に仲間が住んでいた形跡がある「中古物件」に安心感を覚える性質があります。蜜蝋や巣の匂いが染み込んだ巣箱は、探索蜂にとって「ここは安全に暮らせた実績がある場所だ」というサインになるのです。
もし、過去にミツバチが入居していた巣箱を持っていたり、先輩の養蜂家から譲ってもらえる中古巣箱があれば、1段だけで良いので待ち箱に使用することをお勧めします。
なお、中古巣箱を使う際は、巣の残骸にスムシ(ハチノスツヅリガの幼虫)が潜んでいないか必ず確認しましょう。巣クズはきれいに除去し、熱湯消毒するのがベターです。
【誘引編】捕獲率を爆上げする「3種の神器」
ニホンミツバチ専用の「蜜蝋(ミツロウ)」を塗る
中古の巣箱を用意できない場合、新品の巣箱を中古物件のように見せかける魔法のアイテムが「蜜蝋」です。巣箱の天井(スノコ裏)や巣門の辺りに塗り、ドライヤーで熱して木に染み込ませることで、「以前に仲間が住んでいた安心な場所」を演出します。
ここで絶対に間違えてはいけないのが蜜蝋の種類です。必ず「ニホンミツバチの蜜蝋」を使用してください。安価に出回っている西洋ミツバチの蜜蝋では効果がありません。前年から設置している巣箱は、掃除してシーズン前に蜜蝋を塗り直しをするのがおすすめです。

蜜蝋はどこに塗ればよいのですか?

蜜蝋はスノコに下側(すわなち、巣箱の空間側)に薄く塗れば十分です。待箱の内側全面にたっぷり塗ると捕獲率が上がると紹介しているYouTube動画もありますが、経験上塗りすぎると逆に入居率が下がるように感じています。

蜜蝋はどのようにして塗ればよいですか?

蜜蝋はスノコをヒートガンで温めてそこにこすりつけて塗るのがベストです。塗った後にヒートガンでスノコに染み込ませ、表面に何ミリもの厚さで蜜蝋が残らないようにしましょう。ヒアドライヤーでも良いですが、少し時間がかかってしまいますので、できればヒートガンの方が良いと思います。また、ガスバーナーで炙って塗る方も多いですが、焦がしてしまうとミツバチが焦げた匂いを嫌がることが予想されます。
ヒートガンなどの工具についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

ヒートガンはこちらの製品を使っています。
週末養蜂チャンネルさんの以下の動画で蜜蝋はスノコに染み込む程度に薄く塗ることが紹介されています。「あまり塗りすぎるとニホンミツバチが嫌がる」と指摘しています。誘引効果が強まると思ってバーナーで大量に蜜蝋を塗って逆に入居率が下がっている人が多い中、流石です。
ニホンミツバチの蜜蝋はネット通販やフリマサイトなどで入手できます。週末養蜂さんの蜜蝋はこちらです。
最強の誘引アイテム:「キンリョウヘン」
ニホンミツバチを強烈に引き寄せるのが、蘭の一種である「キンリョウヘン(金稜辺)」やその他の近縁の蘭です。
開花したキンリョウヘンの鉢を待ち箱の近くに置いておくことで探索蜂を呼び寄せることができます。
1つ重要な注意点があり、それはキンリョウヘンの花は受粉してしまうとミツバチ誘引物質を出さなくなってしまうことです。ミツバチによって花が受粉しないように、キンリョウヘンを鉢ごと大きな洗濯ネットや玉ねぎネットで覆ってミツバチがアクセスできないようにするのが良いと思います。
洗濯ネットは100円ショップで売られていますが、キンリョウヘンを鉢ごと入れられる毛布用の洗濯ネットは300円ほどすると思います。
もう一つの方法はキンリョウヘンの花を切り花にして、水を入れたペットボトルや空き缶に挿して待ち箱の近くに置く方法です。このメリットはキンリョウヘンの株に負荷をかけないことです。ただ、鉢に付けたままの花よりは開花期間が短くなります。
キンリョウヘンについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

お助け誘引アイテム:「待ち箱ルアー」
キンリョウヘンは、分蜂の時期に合わせて花を咲かせるように開花調整が必要です。キンリョウヘンを育てて上手に開花調整する自信がない方、あるいは、開花調整に失敗してしまった方も大丈夫。
キンリョウヘンのミツバチ誘引成分を化学的に合成した「待ち箱ルアー」が販売されています。
待ち箱ルアーは京都先端科学大学発のベンチャーが製造する製品で、効果は約45日間持続し、分蜂のピーク期間を十分にカバーできます。
待ち箱ルアーの取り扱い上の注意と取り付け方法
ルアーは待ち箱に押しピンなどで直接留めます。
ルアーの表面にある白いワックスの上に「透明な液滴」がついていますが、この液滴こそが誘引成分の本体です。 「なんだこの水滴?」と指で拭き取ってしまうと誘引効果が大幅に低下してしまいます。開封時は液滴に絶対に触れないよう注意してくださいね。
また、ルアーは雨に濡れてしまうと誘引成分が流れてしまうため、待ち箱の屋根の下に設置するか、パッケージの袋などで「雨よけの傘」を作ってルアーに被せましょう。
設置のやり方は今後YouTube動画でも解説します。
待ち箱ルアーの入手方法(PR)
また、待ち箱ルアーは株式会社週末養蜂さん他から購入できます。こちらです。
週末養蜂さんから待ち箱ルアーですが、2026年は8月まで販売されるということですので春分蜂が終わっても孫分蜂(夏分蜂ともいう)の捕獲にも利用できますね。
セット買いだと以下のように安くなるようです。5個セットはこちら(1つあたり200円安い)、10個セットはこちら(1つあたり400円安い)、15個セットはこちら(1つあたり500円安い)、20個セットはこちら(1つあたり550円安い)。
夏分蜂も狙うので多めに必要だとか、蜂友さん同士でシェアするとかの場合は、まとめ買いがお得です。
「誘引液(黒蜜)」でダメ押し!
さらに確率を上げる裏技として、ハチミツを搾った後のカス(スクズ)を煮出して作る「誘引液」があります。
これを水で薄めてスプレーボトルに入れ、巣箱の外側や巣門付近に吹きかけると、ミツバチがその匂いと味を覚えて入居しやすくなります。なお、巣箱の「中」に直接入れないように注意してください(カビやアリの原因になります)。
これが無くても入居しないわけではありませんが、入居確率を上げることに興味のある方は先輩養蜂家から分けてもらうかネットショップなどで購入すると良いと思います。
【プロの裏技】キンリョウヘンやルアーは「あえて1箱だけ」に付ける
同じ敷地内に複数の巣箱を並べて置く場合、あえて全ての巣箱にキンリョウヘンやルアーを付けないというテクニックがあります。
全てに付けると、ミツバチが「どっちに入ろう?」と迷ってしまい、判断に時間がかかった末にどちらにも入居しないことがあると言われています。
ルアーは「あえて1箱にだけ」設置し、そこに入居したら次の空箱にキンリョウヘンやルアーを移していく(リレーする)のが、最も効率的な使用方法です。
【時期編】絶対に遅れてはいけない「タイミング」の把握
分蜂シーズンは最初の1ヶ月が勝負!
ニホンミツバチの分蜂は、地域とその年の気候によって大きく時期が異なります。目安として、九州南部では3月上旬、関東では3月下旬、東北では4月中旬頃から始まります。
重要なのは、分蜂が始まってからの「最初の1ヶ月」に全体の7〜8割が集中するということ。このタイミングに遅れると、捕獲のチャンスは大幅に減り、翌年に持ち越しになってしまいます。
この春の分蜂時期にあわせて準備を進めることが大切です。
ルアーを開封するベストなタイミング
待ち箱ルアーの有効期間は約45日間です。ピークが来てから慌てて開封するのではなく、お住まいの地域の「分蜂が始まる予想日の1週間前」に開封して設置するのがベストです。
実際の分蜂の時期については、株式会社週末養蜂さんが展開されている「分蜂マップ」で確認するのが一番確実です。「分蜂マップ」では、全国の養蜂家がリアルタイムで分蜂情報を投稿しています。自分の地域より少し暖かい場所で分蜂報告が出始めたら、設置のサインです。「分蜂マップ」はスマホアプリもあります。
春を逃しても諦めない!夏まで待ち箱を残す理由
もし春の分蜂ピークを逃してしまっても、すぐに巣箱を片付けてはいけません。夏になると春に分蜂した群れが更に分蜂する「孫分蜂(夏分蜂)」が起きたり、住み心地が悪くて前の巣を飛び出してきた「逃去群」が、あなたの待ち箱に入居してくれるチャンスが残っています。
ルアーの効果が切れていても、蜜蝋の匂いだけで入居することもあるので、そのまま設置し続けましょう。
私も実際に7月や8月に自然入居した経験があります。以下のYouTube動画を御覧下さい。
蜜蜂Vlog No. 17 ニホンミツバチの夏分蜂が連荘フィーバー。奇跡の大逆転!😭
【場所と数編】「どこに・いくつ置くか」で決まる確率アップの法則
「試しに1箱」でもいいけど、できるだけ多く分散配置がベスト
初心者は「試しに庭に1箱だけ置いてみる」というのも面白いかと思います。私も蜂友さんも、1箱だけ置いた待ち箱に1週間位内に入居があって、ニホンミツバチ飼育にハマってしまいました。
ただ、一般的には、1箱だけの捕獲確率は1〜2割と非常に低いと言われています。捕獲率を上げる最もシンプルかつ最強のコツは、「打席に立つ回数を増やす」こと。1箱を2箱にすれば単純に確率は2倍です。2〜3箱でも良いですが、できれば「最低5箱」の待ち箱を用意しましょう!
ここで注意が必要なのは、多くの待ち箱を全て自宅の庭に並べても、残念ながらあまり入居確率が上がらないということです。街箱はそれぞれ「数百メートル以上離して分散配置」するのがよいとされています。
「いや、そんな場所無いです」
そう思いませんでしたか?確かに簡単ではないです。友人や親戚などに交渉して待ち箱を置かせてもらう場所をなんとか見つけることができれば入居確率を格段に上げることができます。お礼はハチミツが収穫できたらお裾分けということで。
なお、入居後の蜜蜂群入の巣箱は入居当日の夜なら他の場所に移設できます。待ち箱を置かせて貰った場所で飼育することが難しい場合も、入居当日の夜に自宅などに移設すればよいのです。
ただし、入居の翌日以降はその場所を覚えてしまうので、移設するのは数週間後に巣が安定してからで、かつ、2キロメートル以上離れた場所に移す必要があるなど、ちょっと面倒になりますのでご注意を。
ミツバチが思わず住みたくなる「理想の立地」
以下のような場所はミツバチが入居しやすいと言われています。
- 前方が開けていて飛び立つのに障害物がない
- 斜面の上で巣門から土地が見下ろすようになっている
- 大きな木の根元など、帰ってくる際の目印(ランドマーク)になるものがある
- 夏は葉が茂って涼しい日陰になり、冬は葉が落ちて暖かい日差しが入る落葉樹の下
- 家の南か東南側の庇の下で、入隅(いりずみ)になっている場所
これらは入居確率が高いとされていますが、これらの条件を満たさないと絶対に入居しないというわけではありません。できるだけこのような場所に近い場所に置けるように工夫しましょう。
また、過去に入居実績のある場所は翌年も入居確率が高いと言われていますので、必ず待ち箱を設置しましょう。
逆に避けるべき場所は、風通しの悪い窪地や谷底、騒がしい場所、野焼きが良く行われる場所などです。
住宅地での設置はトラブルに注意
残念ながら住宅密集地で待ち箱設置は止めておいた方が無難と思います。
昆虫が嫌いという人も多いですし、また、ミツバチに刺されるのが怖いので移設してほしいと苦情があることもあります。私も蜜蜂の巣箱を離してほしいと言われて移設したことがあります。
また、運良く捕獲に成功し越冬できた場合は、翌年に分峰があります。多数のミツバチが飛びますので大騒ぎになるリスクがあります(なお、分蜂時のニホンミツバチは非常に大人しく刺すことはほとんど無いとされています)。
【実際の設置編】
設置場所が決まったら以下の手順で待ち箱を設置します。
- 地面を平らにする
- 台を置いて水平を確認
- 巣箱一式をおいて固定する
- キンリョウヘンや待ち箱ルアーを設置する
詳しくは今後制作するYouTube動画で説明します。
【マインドセット編】初心者が陥りやすい「やりすぎの罠」
過ぎたるは及ばざるが如し
初年度は「ビギナーズラック」で入居したのに、その翌年からは全然入居しない。
こんな経験ありませんか?かくいう私も最初は良く入居したのに翌年からは入居確率が落ちています。
道具や配置の話の次は、意外と見落としがちな【マインドセット」、すなわち「心構え」の話です。初心者ほど「一生懸命やりすぎてしまう」ことが裏目に出るケースが多いのです。
ツルツルで綺麗すぎる巣箱は敬遠されるかも
巣箱を自作するとき、人間の感覚で「内側をカンナで綺麗に仕上げよう」「隙間風が入らないようにピッタリ作ろう」と考えてしまいがちです。
大工さんに巣箱製作をお願いしている場合も綺麗にカンナかけしてくれるかと思います。
しかし、野生のニホンミツバチが自然界で営巣する場所を思い出してください。大木の「うろ」、崖の割れ目、石垣の隙間…。どれもザラザラで凸凹した、決してツルツルではない空間です。
内壁がツルツルに磨かれた巣箱は、ミツバチが巣を作る際に足場が悪く、蜜蝋を固定しづらいため敬遠される可能性があります。巣箱の内側はザラザラした状態でOKです。
ミツロウは”ほどほど”に
ミツロウで誘引しようと巣箱の内側全面にたっぷり厚塗り。巣門辺りもたっぷり塗って、なんなら待受中に「追いミツロウ」。
実はミツロウ
バーナーで炙りすぎ
前年に子出しがあったり、スムシが蔓延してしまって、巣箱内を良く消毒しようとバーナーでたっぷり炙ったりしてしまっていませんか?はい。私のことです(笑)。
YouTubeでもバーナーで炙って巣箱を消毒する動画を見ることがあります。
ところが、焦げるまで炙ってしまうとニホンミツバチが焦げた匂いを嫌がって入居しない可能性があります。
一説には木が焦げた匂いは山火事を連想するからであるとも言われています。
一方で、ニホンミツバチが焼けた匂いを嫌がるかどうかは地域差があるという説があります。以下の書籍の46ページの囲み記事では、九州方面では巣箱の内側をバーナーで焼いたものでも入るが、盛岡ではそのにおいがだめなためか、何年設置しても入ってくれないと記載されています。
バーナーを使う場合は軽く炙るだけにして、焦げるまで炙らないようにしたほうがよいですね。
書籍 「だれでも飼える 日本ミツバチ」(PR)
巣箱を熱湯消毒することが可能ならバーナーよりもベターと思います。「養蜂女子のみつばち日記」さんでは巣箱を煮沸消毒する代わりにスチームクリーナーで消毒することを提案されています。私は大きな寸胴でお湯を沸かせて煮沸消毒しましたが、けっこう大変だったので来年は試してみようかと思っています。
アイリスオーヤマのスチームクリーナー(PR)
頻繁に覗き込むのはストレスの元
巣箱を設置して数日、偵察に来たミツバチを発見すると「わぁ、来た来た!」と大興奮。思わず巣箱に顔を近づけて覗き込んだり、スマホで動画を撮影しようと近づいたりしたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、これは絶対にNGです。
探索蜂は非常に敏感で警戒心が強い個体です。人間の気配、特に影や振動、息の湿気などを感じ取ると、「この物件は危険だ」と判断し、二度と来なくなってしまうことがあります。
観察したい場合は、巣箱から最低でも5メートル以上離れた場所から静かに見守りましょう。もどかしい気持ちを抑えて、ミツバチを信じて待つ。これが捕獲成功への一番の近道です。
【入居後の対応編】探索蜂の到来から「入居確定」までの正しいステップ
探索蜂が来ても「放置する勇気」
待ち箱の周りを数十匹、数百匹のミツバチが飛び回り始めると「入居した!」と興奮するかもしれません。しかし、彼らはまだ物件を吟味している「探索蜂(内見係)」です。
ここで絶対にやってはいけないのが「嬉しくて覗き込む」「スマホで撮影しようと近づく」ことです。探索蜂は非常に警戒心が強いため、人間の気配を感じすぎると入居場所として選ばなくなる可能性があります。
ひたすら「何もしないで待つ(放置する)」のが最大の極意です。探索蜂が来ていても翌日パタッといなくなることはよくあります。これは他の物件と比較検討しているだけなので、焦らず待ちましょう。
入居確定の確実なサインは「黄色い花粉」
めでたく新居に選ばれて、ニホンミツバチが入居する瞬間を目撃できればとてもラッキーです。この場合は入居したことが明らかです。
一方、ミツバチがいるけど、探索蜂なのか不在時に入居したのかが分からない場合はどう判断すればよいでしょうか?
見分ける方法の1つ目はミツバチの飛行です。探索蜂は巣箱の周りをあちこち飛び回り、中に入ったり出たり、明らかに吟味している様子で飛びます。一方、入居後の蜜蜂は巣門から一直線に飛んで出かけていき、戻るときも巣門に向かって飛んできて直ぐに中に入ります。
より確実なサインは「足に黄色い花粉の団子をつけて、巣箱に入っていく働き蜂」を見つけることです。花粉を持ち帰っているということは、巣の中で育児(産卵)が始まっている証拠であり、入居が確定したと言えます。
入居を確認したらやるべきこと
入居を無事に入居が確認できたら、以下の3つの対応をしましょう。
① ルアー・キンリョウヘンの付け替え もう不要なので、すぐに取り外して別の空の待ち箱に使い回し、さらなる捕獲を狙いましょう。
② 最低1週間は内検を我慢 入居直後の群れはとても神経質になっています。内検(中を確認すること)は最低でも1週間は我慢し、そっと見守りましょう。刺激を与えすぎると、せっかく入居した群れが「逃去」してしまう可能性があります。
【プロの裏技】入居当日の夜に移設して、同じ場所で「おかわり入居」を狙う
実は、1つの待ち箱に入居があった場所は、短期間のうちにもう1群入居する可能性が高い「当たり場所」です。これを無事にミツバチが入居した!と喜んで終わりではありません。実は、捕獲に成功したその場所は、周囲に自然巣があったり、ミツバチの好む環境が整っていたりする「超優良物件」である証拠なのです。
入居当日の夜に移動させ、同じ場所にすぐ待ち箱を置く! 入居が確認できたら、ミツバチが全て巣箱に戻る「その日の夕方暗くなってから」、巣箱を別の場所(飼育する場所)へ移動させます。そして、全く同じ場所に、すぐに「新しい空の待ち箱」を設置してください。
なぜ連続で入居する確率が高いのか?
ニホンミツバチは、1つの巣から1回だけ引越し(分蜂)をして終わりではありません。母親の女王蜂が飛び立った後、新しく羽化した娘の女王蜂が、第2、第3の分蜂を繰り返します。 つまり、あなたの待ち箱に入居した群れの「実家」がすぐ近くにあり、そこから数日〜1週間ほどの間隔で、また別の群れが引越し先を探しに出てくる可能性が非常に高いのです。
同じ場所に空箱を置いておけば、数日以内にまた別の群れが連続して入居する「フィーバータイム」が発生することがあります。入居した特等席は空けっぱなしにせず、すかさず次の空箱を仕掛けるのが、群れを効率よく増やす極意です。
もちろん、翌年もその場所は一等地として、必ず待ち箱を設置しましょう。
まとめ:「準備8割、待つ2割」が捕獲成功の秘訣
ニホンミツバチの捕獲で最も大切なのは、分蜂が始まる前にどれだけ準備を整えられるかです。分蜂が始まってしまえば、あとは待つことが中心になります。
もう一度、ポイントを振り返りましょう。
- 基礎知識:まずは蜜蜂の分蜂の理解が大切です
- 準備:余裕をもって巣箱を用意しておきます
- 誘引:蜜蝋(ミツロウ)、キンリョウヘンか待ち箱ルアー(+誘引液)
- 場所と数:できるだけ多くの待ち箱を分散配置、理想の立地を選ぶ
- 時期:分蜂マップを活用し、分蜂開始1周間前からキンリョウヘンやルアーを設置
- マインドセット:なんとか入居させたいと頑張り過ぎない
- 入居後の対応:花粉団子で入居確定を見極め、静かに見守る
自然が相手なので、必ず1年目で捕獲できるとは限りません。色々と工夫して初めて入居した時の喜びは格別ですので、焦らず、楽しみながらチャレンジしてみてください。きっとミツバチたちがあなたの物件を選んでくれる日が来ますよ!
参考記事
巣箱製作がまだの方はこちらを御覧下さい。

蜜蜂誘引蘭のキンリョウヘンについてはこちらをご覧下さい。

ニホンミツバチ飼育全般について以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

参考:YouTube動画
私がニホンミツバチを飼育している様子をYouTube動画にしていますので、良かったらご訪問いただければと思います。
YoutTubeチャネルはこちらです。
本記事で説明した内容も近日中にYouTube動画にする予定です。
終わりに
ここまで読んでくださりありがとうございました。この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
それでは、楽しい養蜂ライフを!

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