「庭に巣箱を置いて、自然に入居してくれるのを待ちたい」 「週末だけ、田舎の別荘でミツバチと過ごしたい」
そんな素敵な養蜂ライフは、「あなたがニホンミツバチ飼育を始めるべき理由10選」でもお伝えした通り、私たちの生活にかけがえのない潤いを与えてくれます。
しかし、いざ具体的な準備を始めたときの最初の壁が、行政への「届け出」です。
「趣味で数箱飼うだけでも届け出は必要なの?」 「まだ蜂が入っていないのに、書類なんて出せるの?」 「東京に住んでいて山梨で飼う場合は、どっちに出すの?」
これらの疑問は、多くの初心者が抱える悩みですが、ネットでちょっと調べただけでは正確に把握するのが難しいのが現状です。
本記事では、本記事では、養蜂振興法に基づく法的な義務から、実際の運用ルール、そして「まだ蜂がいない段階」での手続きや「県またぎ」のケースなど、ニホンミツバチの飼育に必要な行政手続きを、徹底的に解説します。この記事を読めば、必要な手続きが理解できて、安心してニホンミツバチとの生活をスタートさせることができると思います。
ニホンミツバチ飼育の全体像については、以下の記事にまとめていますので、あわせて参考にしてください。

読者がこの記事を読むメリット
- 適法性の確保: 法律違反(10万円以下の過料)のリスクを回避し、堂々と飼育できるようになります。
- 0群スタートの不安解消: 捕獲前の「待ち箱」段階で、いつ、何を提出すべきかが明確になります。
- 複雑なケースへの対応: 自宅と飼育場所が離れている場合の「転飼(てんし)」手続きの落とし穴を回避できます。
- 行政との良好な関係: 地域の「蜂群配置調整」の趣旨を理解しておくことで無用なトラブルを未然に防げます。
【序章】なぜ趣味の養蜂でも「届け出」が義務なのか?|養蜂振興法改正の背景
日本蜜蜂の飼育を始めるにあたり、最初に理解しなければならないのが「養蜂振興法(ようほうしんこうほう)」という法律の存在です。
かつて、趣味で少数の日本蜜蜂を飼う場合、行政への届け出は必ずしも求められていませんでした。しかし、この状況は平成25年(2013年)1月1日の法改正によって劇的に変化しました。
法改正の衝撃:趣味の養蜂家も「届出義務」の対象へ
平成25年の改正以前は、届け出の対象は主に「業として(商売として)」蜜蜂を飼育する養蜂家に限定されていると解釈されることが多くありました。しかし、改正後の養蜂振興法第3条では、以下のように定められています。
蜜蜂の飼育を行う者は、農林水産省令の定めるところにより、毎年、その住所地を管轄する都道府県知事に次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。
ここには「業(ぎょう)として」という文言はありません。つまり、趣味であろうと、たった1群であろうと、蜜蜂を飼育するすべての人が届け出の対象となったのです。この変更は、当時多くの趣味養蜂家に影響を与えましたが、現在では定着したルールとなっています。
また「養蜂振興法の施行に関するQ&A」(令和5年11月30日付 5畜産第1925号:畜産振興課長通知)では、ハチミツの無償譲渡を目的とする場合も届け出の対象となることや、重箱式であっても反復して使用する場合は届け出の対象となることが記載されています(巣枠を反復使用する際には腐蛆病などに注意が必要なため)。
また、蜜蜂の適正分布の観点等から、法に基づく届出が不要の人についても蜜蜂飼育届の提出を「お願い」している都道府県もあるようです。
なぜ行政は全飼育者を把握したいのか?
「たかが趣味の数箱で、なぜ国に報告しなければならないのか?」と疑問に思うかもしれません。しかし、これには「防疫(病気の予防)」と「調整(蜜源の確保)」という、2つの極めて重要な理由があります。
理由①:伝染病の拡大を防ぐため(防疫)
ミツバチは「家畜」です。そして、家畜には恐ろしい伝染病が存在します。特に「腐蛆病(ふそびょう)」などの法定伝染病は、ひとたび発生すると近隣の巣箱へあっという間に感染が拡大し、地域のミツバチを全滅させる力を持っています。
もし、行政が把握していない「隠れ巣箱」で病気が発生した場合、家畜保健衛生所は検査ができず、感染源を特定することも、封じ込めることもできません。あなたの愛する日本蜜蜂が病気にかかったとき、それが近所のプロの養蜂家の何百もの群れを全滅させるリスクがあるのです。届け出は、防疫体制の基礎データとして不可欠なのです。
理由②:蜜源植物を巡る争いを防ぐため(配置調整)
ミツバチが蜜を集める花(蜜源植物)の量には限りがあります。ある地域に巣箱が無秩序に増えすぎると、花蜜の奪い合い(競合)が起き、採蜜量が減るだけでなく、ミツバチ自体が栄養不足で弱ってしまいます。
行政は、誰がどこにどれだけの巣箱を置いているかを把握することで、必要な場合は「このエリアはもう過密だから、これ以上は増やさないでほしい」といった「配置調整」を行います。
【基本編】「蜜蜂飼育届」の提出ルールと締め切り
では、具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか。まずは最も基本となる「蜜蜂飼育届」について解説します。
提出すべき人
原則ミツバチを飼育するすべての人です。 例外は極めて限定的で、「学術研究のために密閉された設備で飼育する場合」や「受粉(ポリネーション)のために一時的に農地に置き、越冬させない場合」などに限られます。 趣味で日本蜜蜂を飼い、蜂蜜を採ったり、群れを観察して楽しんだりする場合も、100%届け出が必要と考えるべきです。
提出先(基本原則)
あなたの「住所地(住民票がある場所)」を管轄する都道府県知事に提出します。 具体的な窓口は、各都道府県の「家畜保健衛生所」、「畜産課」、あるいは市町村の農林課などが担当しています。
「巣箱を置く場所」の役所ではなく、「あなたが住んでいる場所」の当局に出すのが基本です。
提出期限:毎年「1月31日」
法律により、飼育届は毎年1月31日までに提出することが義務付けられています。
- 報告内容: その年の1月1日時点での飼育数と、その年の1年間の飼育計画。
- サイクル: 一度出せば終わりではなく、毎年提出する必要があります。
この「1月31日」という日付は、春の分蜂シーズン(3月〜5月)が始まる前に、行政が地域の巣箱の配置を調整するために設定されている重要な期限です。
【実践編・その1】「まだ0群」の初心者はどうする?1月31日の壁
ここからが、これから日本蜜蜂を始めようとする初心者にとって最大の難関です。
「今はまだ1月。手元にミツバチは1匹もいない(0群)。でも、春になったら捕獲して飼いたい。この場合、1月31日までに届け出を出すべきなのか?」
この疑問に対する答えとしては、「出すべき」と考えます。
「0群」でも届け出が必要な理由
多くの自治体(例:福井県、北海道、広島県など)のガイダンスでは、「現在飼育していなくても、その年に飼育する予定がある場合は届け出が必要」と明記されています。
飼育届には通常、「1月1日現在の飼育群数」を書く欄と、「年間の飼育計画」を書く欄があります。 初心者の場合、以下のように記入して1月31日までに提出するのが最も適切な手続きです。
- 1月1日現在の群数: 「0群」
- 年間の飼育計画(最大群数): 「2群」や「5群」など、捕獲したい目標数
- 備考欄: 「春に自然入居(分蜂群捕獲)を予定」などと追記。
なぜ捕獲前に出さなければならないのか?
最大の理由は「場所の確保(配置調整)」です。 もしあなたが「捕まえてから届け出よう」と考えて4月まで待ったとしましょう。しかし、その間に近隣のプロ養蜂家や他の愛好家が1月末までに届け出を済ませていたらどうなるでしょうか? 行政は1月末に集まった届け出をもとに、「このエリアにはこれだけの蜂がいる」という地図を作ります。あなたが4月に捕獲してから「ここで飼います」と事後報告しても、「そこは既に過密エリアなので飼育は認められません」と指導され、最悪の場合、せっかく入居した巣箱を撤去しなければならなくなるリスクがあるのです。
自分の飼育場所を行政の地図に載せてもらい、権利を確保するためにも、「まだいないけれど、ここで飼うつもりです」という意思表示を1月中に済ませておくことが、戦略的にも正解なのです。
1月31日を過ぎてしまった場合(随時届出)
もし、この記事を読んでいるのが2月や3月で、すでに締め切りを過ぎてしまっている場合はどうすればよいでしょうか?
諦める必要はありません。多くの自治体では、「新たに飼育を開始する場合」について、飼育開始前の随時届け出を受け付けています。
- シナリオ: 4月に突然、庭の待ち箱に日本蜜蜂が入った!
- アクション: 入居した時点であなたは「飼育者」になります。速やかに(理想的には入居を確認したその日のうちに、あるいは翌日すぐに)役所に連絡し、届け出を提出してください。
- 注意点: ただし、1月31日の締め切りを守った人たちが優先的に配置調整されているため、後出しの場合は場所の変更を求められる可能性がゼロではありません。
結論:初心者のアクションプラン
- 現在が1月中の場合: まだ巣箱に蜂がいなくても、必ず1月31日までに「0群」として飼育届(計画)を提出する。これが最も安全で確実です。
- 現在が2月以降の場合: すぐに所管の行政機関(畜産課、家畜保健衛生所など)に電話し、「これから日本蜜蜂の捕獲を始めたいが、どう手続きすればよいか」を相談する。そして、捕獲する前に(待ち箱を設置する段階で)届け出を出すよう指導されることが多いです。
【実践編・その2】自宅と飼育場所が違う県の場合は?「転飼」の罠
週末養蜂家の方に多いのが、「東京に住んでいて、山梨や千葉の別荘・実家で飼いたい」というケースです。 この場合、「住所地」と「飼育地」が異なる都道府県になります。ここで登場するのが、非常にややこしい「転飼(てんし)」という手続きです。これを理解していないと、無許可飼育(ヤミ飼育)扱いになりかねません。
転飼は「許可」ですから、届け出のように提出するだけでなく、もし許可されない場合は飼育できないということになります。
「転飼(てんし)」については、「養蜂振興法」の第二条で、「この法律で「転飼」とは、蜂蜜若しくは蜜ろうの採取又は越冬のため蜜蜂を移動して飼育することをいう。」と定義されていますが、実務上は届け出をした都道府県とは異なる都道府県で自然入居によるニホンミツバチ飼育を始めた場合も「転飼」と解釈されて転飼許可申請が必要なようです(法律の定義の文言からはかなりかけ離れた「解釈」であり、法律制定時にニホンミツバチの自然入居は想定していなかったのでしょう)。
これについては自治体によっても解釈が異なるかもしれませんので、飼育を行う場所を所管する行政機関(畜産課、家畜保健衛生所など)に電話して確認することをお勧めします。
住民票ある都道府県以外で飼育するには二重の手続きが必要になる
県をまたぐ場合、原則として2つの役所に対して、別々の手続きが必要になると考えられます。
手続き①:蜜蜂飼育届(あなたの住所地の都道府県へ)
これは前述の通り、「私はミツバチを飼います」という宣言です。
- 提出先: あなたの住民票がある都道府県(例:東京都)。
- 内容: 飼育場所の欄には、他県(例:山梨県)の住所を記載します。
- 意味: 「東京都民である私が、山梨県でミツバチを飼育しています」という報告です。
手続き②:蜜蜂転飼許可申請(巣箱を置く都道府県へ)
これが重要です。「転飼(てんし)」とは、もともとはプロの養蜂家が花を求めて県から県へと移動することを指していましたが、「住所地以外の都道府県で飼育すること」も含むと解釈されているようです。
- 提出先: 巣箱を設置する飼育場所の都道府県(例:山梨県)。
- 必要書類: 「蜜蜂転飼許可申請書」。
- 意味: 「他県民である私が、あなたの県(山梨県)の資源(蜜源)を使わせてもらいます」という許可願いです。
- 手数料: 飼育届は無料ですが、転飼許可申請には手数料がかかる場合がほとんどです(例:1群れ150円、1場所につき2,300円程度など、都道府県により異なる)。
趣味でも「転飼許可」は必要なのか?
「趣味で固定して置いておくだけで、移動しないのに『転飼』なの?」と思うかもしれません。 これについては、自治体によって解釈や運用が分かれることがありますが、原則としては「必要」と考えておいたほうが無難です。
- 厳格な県(例:長野県、岐阜県など): 県外からの持ち込み(または県外居住者による飼育)は、趣味であっても厳密に「転飼許可」を求められます。
- 柔軟な対応の可能性: 一部の地域では、定住的な趣味飼育であれば転飼扱いとせず、現地の出先機関への単純な届け出で済むケースや、手数料が免除されるケースも稀にあるようです。しかし、自己判断は禁物です。
まとめ:住民票のある都道府県以外で飼育する場合には結局どうする?
- まずは「飼育場所(設置予定地)」の都道府県の行政機関(畜産課、家畜保健衛生所など)に電話をする。
- 「〇〇県に住んでいますが、そちらの県の××市で趣味の日本蜜蜂を飼いたいです。転飼許可申請が必要ですか?」と聞く。
- 必要と言われたら、その県の様式で申請書を作成し、提出する(多くの場合、飼育開始の2ヶ月前などの締め切りがあります)。
- 同時に、自分の住所地の都道府県には、1月31日までに通常の「飼育届」を提出しておく。
要注意点: 転飼許可は、地元の養蜂家保護のために「不許可」になることもあります。特に蜜源が不足している地域では、県外からの参入(たとえ趣味でも)が制限される可能性があります。
【詳細解説】提出書類の書き方と準備物
ここでは、実際の「蜜蜂飼育届」の書き方について、初心者が迷いやすいポイントを解説します。様式は都道府県によって微妙に異なりますが、基本項目は共通しています。記載内容はとてもシンプルですので心配は不要です。
必要書類のセット
- 蜜蜂飼育届(様式第1号など): メインの書類。
- 飼育場所の地図(見取り図): 住宅地図のコピーやGoogleマップの印刷など。巣箱の正確な位置に印をつけます。
- 土地使用承諾書(借地の場合): 自宅の庭以外(知人の畑や山林など)を借りて置く場合は、土地の所有者にハンコをもらった「承諾書」の添付が必須となるケースが多いです。
記入のポイント(0群スタートの場合)
- 飼育の目的: 「趣味」や「その他」があればそこに〇。なければ「採蜜」でも構いませんが、販売しないなら備考に「自家消費用」と書くと親切です。
- 蜂群数(1月1日現在): 正直に「0」と書きます。
- 飼育計画(最大群数): その年に飼育する予定の最大数を書きます。例えば待ち箱を5つ置くなら、全部入る可能性を考慮して「5群」と書いておくのが無難です。
- 飼育期間: 「1月1日~12月31日」または「4月1日~12月31日」など、通年で記入します。
- 蜜蜂の種類: 「日本蜜蜂(ニホンミツバチ)」を選択または記入します。西洋蜜蜂とは区別します。
提出方法
- 持参: 最寄りの家畜保健衛生所や地方事務所へ直接行く。
- 郵送: 返信用封筒を同封すれば、控えを送り返してくれます。
- 電子申請: 最近では、東京や大阪など多くの自治体でオンライン申請が可能になっています。
【要注意】「届け出」だけでは不十分?地域独自の「条例」という落とし穴
ここまで、国の法律である「養蜂振興法」に基づく届け出について解説してきました。しかし、自治体によっては、国のルールに上乗せする形で、さらに厳しい「独自条例」を定めている場合があります。
「国の法律を守っているから大丈夫」と思い込んでいると、思わぬ落とし穴にハマる可能性があります。
大阪府の「20メートルルール」の衝撃
もっとも有名なのが、大阪府の事例です。 大阪府では「大阪府蜜蜂の飼育の規制に関する条例」により、単に届け出を出すだけでなく、以下の厳しい設置基準などをクリアしなければ飼育が認められません。
住宅、学校、工場、道路、公園その他人が常時出入りし、通行し、又は集合する場所から20メートル以上離れていること。 (引用:大阪府蜜蜂の飼育の規制に関する条例施行規則)
都市部や住宅地で、自宅の庭から公道や隣家まで20メートルの距離を確保するのは至難の業です。事実上、大阪府の住宅街では趣味の養蜂であっても非常にハードルが高くなっています。
あなたの地域は大丈夫?確認すべきポイント
大阪ほど厳格ではなくても、各市町村がガイドラインとして、飼育場所などについて独自のルールを設けていることがありますので、確認しておきましょう。
役所への質問方法
まずは「〇〇県 蜜蜂飼育」などで検索して都道府県独自の条例やガイドラインが無いか確認しましょう。また、役所に直接電話で以下のように問い合わせるのも良いかと思います。
「養蜂振興法の届け出以外に、この県独自の条例やガイドラインはありますか?」
この一言を聞いておくことで、巣箱を設置した後に「条例違反なので撤去してください」と言われる最悪の事態を防ぐことができます。
【リスク管理】届け出を忘れた場合の罰則とデメリット
「面倒くさいから黙って飼おう」というのは、絶対に避けるべきだと思います。
法的な罰則
養蜂振興法第14条には罰則規定があり、届け出をしなかったり、虚偽の届け出をした場合は「10万円以下の過料」に処される可能性があります。 悪質な場合に適用されるようですので、実際に趣味の養蜂家が摘発されるケースは稀かもしれませんが、法律違反であることに変わりはありません。
ご近所トラブル時の立場
もし、あなたの飼っている蜂が近所の人を刺したり、フン害(洗濯物の汚れ)で苦情が来たりしたとき、無届け飼育だと立場が非常に悪くなります。 「違法に飼育している蜂」として、即座に撤去を命じられるだけでなく、損害賠償請求などの民事トラブルがもし発生したら不利に働くでしょう。届け出をしていれば、「行政のルールに従って適正に飼育している」という最低限の防御壁になります。
感染症の蔓延
もっとも恐ろしいのは、あなたの知らない間に蜂が病気にかかり、それを地域全体に広げてしまうことです。届け出をしていないと、家畜保健衛生所からの「近くで病気が出たから注意してください」という連絡も届きません。 地域の生態系を守るためにも、届け出は養蜂家のモラル(倫理)として届け出はちゃんと行っておくべきと考えます。
よくある質問(FAQ)
- 庭に「待ち箱」を置いただけでも届け出は必要ですか?
-
厳密には、蜂が入っていない空箱の状態は「飼育」ではありません。しかし、入居した瞬間から飼育義務が発生します。入居してから慌てて手続きをするよりは、1月中に「飼育予定」として届け出ておくことが推奨されます。多くの自治体でも、待ち箱設置段階での事前相談や届け出を歓迎しています。
- 届け出にお金はかかりますか?
-
基本的な「蜜蜂飼育届」の手続きは無料です。 ただし、県をまたぐ「転飼許可申請」には、数百円から数千円程度の手数料がかかる場合があります。
- 賃貸アパートのベランダで飼いたいのですが、大家さんの許可証は必要ですか?
-
飼育届に添付する「土地使用承諾書」は、あくまで「その土地を蜂の飼育に使っていいか」という土地所有者の許可です。アパートやマンションの場合、管理規約でペットや家畜の飼育が禁止されていることが多く、トラブルの元です。役所に提出する以前に、管理会社や大家さんの承諾がなければ、飼育自体を諦めるべきでしょう。
- 届け出をしたら、役所の人が検査に来るのですか?
-
日本蜜蜂の趣味飼育の場合、頻繁に検査に来ることは稀です。ただし、近隣で腐蛆病が発生した場合などは、全戸検査のために家畜防疫員(獣医師)が巡回に来ることがあります。これは愛蜂を病気から守るためのものですので、協力しましょう。
まとめ:届け出はミツバチを守るための第一歩
日本蜜蜂の飼育は、自然の恵みを分けてもらう素晴らしい趣味です。しかし、自然相手だからこそ、人間社会のルール(法律)と、生態系のルール(防疫・調整)の両方を守る責任があります。
「届け出」と聞くと、何か監視されるようで身構えてしまうかもしれません。しかし実際には、行政の担当者は地域のミツバチを守るパートナーです。彼らは、あなたのミツバチが病気にならず、蜜源不足で飢えることなく暮らせるように、情報を管理しているのです。
これから始めるあなたがやるべきこと
- 「〇〇県 蜜蜂飼育届」などでインターネット検索して詳細を確認する。
- これから飼育するなら:次の 1月31日までに、住所地の所管の行政機関(畜産課、家畜保健衛生所など)へ「0群・飼育予定」で届け出を出す。
- 県外で飼うなら: 飼育場所の所管の行政機関(畜産課、家畜保健衛生所など)へ「転飼許可」の相談をする。
- 春になったら: 安心して待ち箱を設置し、分蜂群の到来を待つ。
面倒な手続きをクリアしてこそ、心置きなく日本蜜蜂との蜜月を楽しむことができます。まずは明日、管轄の役所のホームページを検索するか、電話で問い合わせるところから始めましょう。
Disclaimer
本記事の情報は執筆時点の法令および一般的な行政運用に基づいています。条例等により地域ごとに細則が異なる場合がありますので、必ずご自身の管轄地域の情報を確認してください。

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